「ポータブルWi-Fi」レビュー
25/03/2022
サムスン電子ジャパンは9月8日、折りたたみスマホの新モデル「Galaxy Z Fold3 5G」と「Galaxy Z Flip3 5G」を国内向けに発表しました。今回は、このうち縦折りスマホのGalaxy Z Flip3 5Gに注目。2020年発売の初代Galaxy Z Flipを購入して約1年半使ってきた筆者が、縦折りスマホの魅力と前世代機からの進化のポイントにに迫ります。
フォルダブルスマホ、つまり折りたためるディスプレイを備えたスマートフォンは、2018年後半に最初のモデルが登場し、現在は4~5社が製品を投入しています。将来的にはスマホの1つの形態として、より身近に使われるようになるという市場予測も出てきています。
中でもサムスンは、世界一の販売数を誇るスマホメーカーであり、グループ内でフォルダブルディスプレイを製造する技術も持つことから、フォルダブルスマホを積極的に製品化してきました。横折りタイプの「Galaxy Z Fold」と、縦折りタイプの「Galaxy Z Flip」という2つの製品ラインがあり、この2年で計6モデルを発売しています。
横折りタイプのGalaxy Z Foldシリーズは、外側と内側にディスプレイを備えていて、「閉じると縦長スマホ、開けばタブレットの大画面」と、スタイルを変えながら使えるスマートフォンです。Z Foldシリーズはいわば、新しい使い方を提案するシリーズと言えるでしょう。
一方、縦折り型のGalaxy Z Flipシリーズができることは、従来の“折れない”スマホとほぼ同じです。一見してどこが良いのか、分かりづらいかもしれません。
筆者は2020年発売の初代Galaxy Z Flipを購入し、他のさまざまなスマホと使い比べながら1年半ほど使ってきました。その経験の中で縦折りスマホならではの利点と感じたのはやはり“コンパクトさ”でした。
小さいスマホというだけなら、iPhone 12 miniのような選択肢もあります。Galaxy Z Flipが秀でているのは、縦長で大きな画面という最新スマホのトレンドに乗りつつも、使わない時はすっきりとしまえるところでした。
5Gへの移行以来、スマホのディスプレイは大型化が進んでいます。動画やゲームを大画面で楽しむという使い方の変化を考えれば当然ですが、持ち運ぶときは意外と不便に感じることも。ポケットに入れて運ぶときにはみ出してしまったり、小さなポーチのようなものに収まりきらなかったりすることがあるのです。
そうしたときに、ポケットの大きな服や大きめのカバンに買い替えずともすっぽりと収まるのは、縦折り型ならではの長所と言えます。
縦折り型スマホの初代Galaxy Z Flipは2020年2月に発売。その約半年後に5G対応版のGalaxy Z Flip 5Gが登場しました。その後継となる今作のGalaxy Z Flip3 5Gは、数えて3世代目ということになります。
Galaxy Z Flip3の主な強化点をまとめると、以下の5つになります。
2020年発売のGalaxy Z Flip/Z Flip 5Gは、縦折り型スマホの初代モデルとしては完成度の高い製品でした。それでも、同世代の一般的なスマホと比べると、機能面で見劣りする部分もありました。今作のGalaxy Z Flip3 5Gで刷新された部分は、“折れないスマホ”との差を埋めつつ、折りたたみスマホならではのよさを引きたたせるような改善となっています。
Galaxy Z Flip3 5Gは、同時に発表されたGalaxy Z Fold3 5Gと同様に、折りたたみスマホとしては初となる防水仕様に対応。さらに日本向けモデルでは、おサイフケータイも搭載されました。
Galaxy Z Flipシリーズのよいところは、洋服の小さなポケットに入れても目立たず、服が型崩れしづらいことです。手に取りやすい位置で持ち運びやすいスマホだけに、Suicaに対応していないのはもったいない――常々そう思っていただけに、おサイフケータイへの対応は“かゆいところに手が届く”アップデートだと感じます。
防水は“あれば間違いなく便利”という機能の代表格でしょう。筆者の場合は、料理中にスマホでレシピを見たり、たまに入浴中に防水スマホで動画鑑賞をしたりすることもあります。ただし、Galaxy Z Flip3 5Gの防水仕様はIPX8相当とはいえ、防水テストでは常温の真水への耐性のみが検証されています。お風呂のお湯やせっけん水につけたり、シャワーを当てたりするのは避けましょう。
外観の刷新とサブディスプレイの大型化は、縦折り型スマホならではの魅力をさらに引き立たせるものと言えます。
コンパクトミラーのように折りたためるという基本形状は変わっていませんが、素材はより高級感のあるものに変更されています。外側の2面は従来の樹脂コーティングからガラス張りとなり、側面のフレームは「Armor Aluminum」と名付けられた新開発のアルミニウム合金が採用されています。
筆者は、Galaxy Z Flipシリーズにはスペックに現れない魅力があると考えています。それは、精密に作られた折りたたみ機構を開くという、ギミック的な楽しさです。Galaxy Z Flip3 5Gの新たなデザインは、凝縮感をより引き立たせて、モノとしての魅力を高めているように映りました。
開いた時の厚みは約6.9mmで、重さは184gと、初代モデルからほとんど変わっていません。ただし、角張った形状に変更されているため、体感ではやや厚みが増したような印象を受けました。
画面を開くと待受画面になり、右側面に指紋センサーを備えているため、右利きならロック解除操作はスムーズに行えます。
外側には「カバーディスプレイ」と呼ばれる小さな画面があり、時計や通知などを表示できます。初代モデルではテキスト1行分の小さな画面でしたが、今回のモデルでは1.9インチと大きくなっています。
カラフルな時計ウィジェットを設定したり、好みの待受画像を設定するなど、自分好みにカスタマイズが可能です。カバーディスプレイもタッチ操作対応で、LINEメッセージなどの長めの通知をスクロール表示できるなど、実用的でもあります。
また、今回は日本で販売される純正ケースの種類も増えています(別売り)。カラフルなレザーカバーや、クリアタイプのリング付きケースなどを揃えており、自分らしくアレンジするのも楽しそうです。
折りたためるメインディスプレイは、6.7インチの有機ELディスプレイで、解像度はフルHD+。開いた時の縦横比は22:9と、縦長なスマホとして知られるXperia 1シリーズよりもさらに縦長な形状です。
ディスプレイのサイズなどの仕様は前世代と変わっていませんが、縁はわずかに狭くなり、すっきりとした印象です。また、ディスプレイの発色は、初代Galaxy Z Flipよりも向上している印象を受けました。
ディスプレイの大きな進化点は、リフレッシュレート120Hzの倍速表示に対応したことです。画面をスクロール操作したときに、残像を減らしてなめらかな見た目で表示できます。なめらかなスクロールのおかげで、TwitterやInstagram、LINEやWebサイトなど、スクロールし続けるコンテンツの閲覧が快適になります。Galaxy Z Flip3 5Gの縦長なディスプレイとの組み合わせはその快適さをさらに高めるものと言えるでしょう。
ディスプレイは薄いガラスで覆われており、手触りは一般的なスマホと変わりません。中央の折り目部分はわずかに凹みがありますが、正面から見る分にはほとんど気になりません。明るい色を表示して斜めからのぞき込むと、凹んでいる部分で光の反射が入ることが分かります。
Galaxy Z Flip3 5Gの使い方は、一般的なスマホとほとんど変わりません。ただし、折りたためることを活かした使い方も用意されています。
折り曲げて角度を付けた状態で固定すれば、YouTubeやNetflix、Zoomなど、一部のアプリが縦折り型スマホ専用の画面表示になります。スマホ用スタンドなしで、動画視聴やオンライン会議が可能です。
カメラで写真を撮るときも、折りたためると何かと便利です。このスマホなら三脚なしで窓に水平に固定したり、ローアングルで撮ったりすることができます。
スタンドなしで使える機能は、前世代のモデルも備えていましたが、Galaxy Z Flip3 5Gでは、より浅い角度でも安定して固定できるようになっています。
筆者は食事中などにちょっとした動画を観るときに、Galaxy Z Flipを角度を付けた状態で使っています。そうしたシーンでは、真上に近い角度からテーブル上のスマホを見ることが多いため、より浅い角度で固定できると便利に使えそうだと思っていました。Galaxy Z Flip3 5Gは、そうした細かい点でも改良が施されているようです。
スマートフォンとしての処理性能について、この記事では詳細には立ち入らずにおきますが、2021年秋時点では最高クラスのものを揃えています。チップセットはクアルコム製のSnapdragon 888を搭載し、メモリ(RAM)は8GBを装備。内蔵ストレージは128GBとなっています。なお、microSDスロットは「非搭載」です。
5Gでは、ミリ波帯を除く新周波数帯に対応。バッテリー容量は3,300mAhと標準的ですが、ゲームをガンガン遊ぶような人でない限り、1日は持たせることはできるでしょう。また、ワイヤレス充電にも対応しています。
一方で、前モデルからほとんど変わっていない部分もあります。それはカメラ。背面カメラでレンズを覆う保護ガラスが強化された以外は、全く同じものを搭載しています。
背面カメラは超広角と広角の2眼カメラで、どちらも約1200万画素。インカメラは約1000万画素です。画角を変えて撮ることもできて、ある程度のマクロ撮影も可能というオールマイティな構成ですが、ズーム撮影に関しては同クラスのスマホと比べると強くはない印象です。
手に取りやすさという面でも“普通のスマホ”に近づいています。これまでの2モデルはauの独占販売でしたが、今回はNTTドコモとauの2キャリアの取り扱いとなりました。
Galaxyスマートフォンの場合、取り扱いキャリアにあわせてモバイル通信の対応周波数帯をチューニングしている場合が多く、au版をSIMロック解除してNTTドコモ網で使う場合に、屋内などで電波が入りづらい場合もありました。ドコモ網で使う場合は、NTTドコモ版を選べばより快適に使えるようになるでしょう。
また、販売価格も下がるものと期待されます。第1世代のGalaxy Z Flipの登場時の価格は税込19万円弱(au版)と、同等スペックの折りたたみではないスマホの倍近い価格でした。
今回のGalaxy Z Flip3 5Gは、予約開始時点ではau版の価格が発表されていませんが、NTTドコモ版の価格は税込148,896円(ドコモオンラインショップ価格)と公表されています。同クラスのハイエンドと比べても大きな差はありません。
Galaxy Z Flip3では、防水やおサイフケータイへの対応、そしてより手に取りやすい価格の実現と、“普通のスマホ”との距離を積極的に縮めてきた印象を受けます。初代機の登場からわずか1年半ですが、縦折り型のフォルダブルスマホは急速に機能面でのキャッチアップを進め、Galaxy Z Flip3 5Gでは早くも成熟期に入りつつあるようです。
縦折り型の折りたたみスマホの魅力は、なんと言っても目を引くギミックです。外装の質感の向上や、カバーディスプレイやケースなど、カスタマイズできる余地の広がりは、モノとしての魅力をさらに高めた改良と言えます。
大画面スマホをスタイリッシュに持ち歩きたい人や、普段使いのモノはこだわりを持って選びたいという人には、検討してみてほしい1台に仕上がっています。