「ポータブルWi-Fi」レビュー
25/03/2022
お店のレジ横やポスターなどで、正方形の枠内に白黒のマスを印刷した「QRコード」を見ることが増えてきた。スマホのカメラをかざすだけで情報を読み取れるため、決済やアプリのダウンロード、LINEの友だち追加など、さまざまなシーンで使われている。
今回は、あらためてQRコードの仕組みや導入事例、実際の使い方などを紹介しよう。
QRコードとは、スマホなどのカメラをかざすだけで、バーコードのように情報を読み取れる技術だ。冒頭に挙げた例以外にも、看板や広告、工場での在庫管理、予約した映画のチケットの発券などに印刷され、その用途は多岐にわたる。
今でこそスマホの普及とともに全世界へと広まったが、実は1994年に株式会社デンソーウェーブが開発した日本生まれの技術。最大20文字ほどの情報しか記録できないバーコードに対し、「より多くの情報を格納したい」というニーズに応えて開発された。
バーコードから進化した点は、情報を横並びに記録する「一次元コード」ではなく、情報を縦と横の2方向に記録する「二次元コード」であること。容量の大きいデータの場合、バーコードだとコードの桁もかさみ、商品のパッケージに印刷するのは難しい。二次元に記録できるQRコードなら数十倍から数百倍もの情報を格納できる。
情報を読み取るための技術として、QRコードのメリットは多い。
■大きなデータを記録できる真っ先に挙げられるメリットは、バーコードに比べて大きなデータを記録できること。もっとも大容量な「バージョン40」、誤り訂正レベルLの場合、最大で漢字・かなを1,817文字、英数字を4,296文字、数字のみなら7,089文字を格納できる。
従来のバーコードは、限られた桁を商品の国番号や事業者コード、商品コードなどに割り振り、それをリーダー側のデータベースと照合することで商品の情報を得る仕組みだったが、大容量データを格納できるため、QRコードなら割り振りに限らず、品名や生産日、使用期限といった多岐にわたる情報を記録できる。
さらにはWebサイトやアプリのURLも読み取れるため、インターネットとの連携も可能になった。
■どの角度からも高速で読み取れる高速で読み取ることができるのもQRコードのメリットだ。3つの角に配置している四角い「切り出しシンボル」があるため、コードの存在とコード領域を即座に認識でき、どの角度からでも高速で読み取れるため、何度もスマホの向きを変えたり、なかなか認識せずにやきもきと待たされたりといったストレスとは無縁だ。
■破損や汚れに強いまた、QRコードは破損や汚れにも強い。コードの一部が欠損しても、コード自身でデータを復元する「誤り訂正機能」を持っている。
誤り訂正機能には4段階のレベルがあり、レベルが高くなるほどQRコードの汚れや欠損率が高くなっても読み込めるようになっている。一般使用ではレベルLやM、汚れがつきやすい工場などの環境ではレベルQやHの使用が推奨されている。
■カメラ撮影データの画像処理により読み取りができるなにより専用のリーダー(読み取り機)を必要とせず、カメラの画像処理でデータを読み取れることが、QRコード普及の大きな要因のひとつだろう。これまでのバーコードはレーザーや特殊なセンサーによる読み取りのため、スーパーやコンビニで見かけるような専用のリーダーが必要だった。QRコードならそれらの初期投資を抑えられるのだ。
一見すると解読不能に見えるQRコードだが、その構造は一定のルールに基づいている。ここからはTIME & SPACEのURLを示したQRコードをもとに、どの部分がどんな役割を果たしているのか、詳しく解説したい。
① セル(言語)まず、コード内に存在する白黒のマス(セル)だが、実は2進法で言語を表すように設定されている。いわば、白黒のマスは0と1の集合体であり、記録された言語そのものなのだ。
② 切り出しシンボルそして、四隅にある四角形が「切り出しシンボル」だ。位置検出や歪んだコードの外形を正確に検出する役割があり、カメラはこれを捉えることで対象をQRコードだと認識し、どの角度からでも高速で読み取ることができる。
ちなみに四角形を採用したのは、コードの回りにある文字や図形からコードだけを早く抽出するため。開発陣が5,000ページ以上もの帳票、チラシ、パッケージなどを調査した結果、もっとも使われていない比率を採用した図形が四角形だったという。その配置や数、サイズの比率も、統計をもとに決定されている。
③ タイミングパターン黒いセルと白いセルが交互に配置されており、QRコードの座標を検出する役割を果たす。
④ アライメントパターン右下の方にある小さな目玉のようになっているこの箇所は、カメラを斜めにかざしたときでも各セルに生じるズレや歪みを補正するために重要な役割を果たす。
⑤ フォーマット情報(誤り訂正機能)切り出しシンボルの周囲を囲うのが、前述した「誤り訂正機能」のレベルを決定するものだ。この配列のパターンにより、誤り訂正レベルが設定されている。
上記の②〜⑤以外の部分が、デザインできるデータ領域だ。さらにQRコード全体には、白と黒のマスをバランスよく配置するために「マスク」と呼ばれる加工も施されている。黒だらけでびっしり埋まったコードを見かけないのは、マスクによる補正のおかげだ。8種類の法則に基づき、記録された言語を保ちながら白と黒の色を反転させる仕組みになっている。
そんなQRコードだが、具体的にどのように活用されているのか。ここでは代表的な導入事例を紹介しよう。
■QRコード決済昨今、世界的に普及しつつあるのがQRコード決済だ。レジ横に用意されたQRコードを専用のアプリで読み取るか、自分のスマホの画面に表示したQRコードを店側に読み取ってもらうことで、あっという間に決済が完了する。特に中国や韓国での普及度は目を見張るほどで、デパートからレストラン、屋台、露店に至るまでQRコード決済が当たり前になっている。
また、日本でも着々とQRコード決済が普及しはじめており、2019年4月9日からはKDDIも「au PAY」をスタート。au WALLETプリペイドカードの残高から代金が支払われる仕組みで、「au WALLET」アプリからQRコードを表示させ、レジで読み取ってもらうことで支払いが完了する。au PAY支払いによりWALLETポイントも貯まり、貯まったWALLETポイントもチャージして支払いに利用できる。
■ツイッターやLINEなどのアカウント情報をQRコード化SNSで友達をフォローする場合、IDや名前を検索する人も多いだろう。だが、長い文字列の入力はなかなか面倒なのも事実だ。そこでQRコードに頼れば、TwitterやLINEなどのアカウント情報を、スマホのカメラをかざすだけで登録できる。初対面で連絡先を交換するときにも便利だ。
■入退場管理サッカーや野球のスタジアム、コンサートなどイベントの一部では、QRコードによるチケットレスでの入場を導入している事例もある。インターネットで試合を予約し、スマホに送信されたQRコードを現地のリーダーにかざすだけで、簡単に入場できるシステムだ。また、空港や鉄道の改札やバスの乗車券にも導入の事例があり、入退場の管理においてもQRコードは活躍している。
■製造現場での在庫や工程などの管理あまり知られていないが、そもそもQRコードは工場向けにつくられた技術。製造現場における在庫や部品の管理はもちろんのこと、製品に個別のQRコードを付与することで製造の工程も追跡しやすくなった。その他、アパレル製品の入出庫管理、店舗での在庫管理、倉庫でのピッキングなど、あらゆるシーンで使われている。
さて、ここからは実践編。実際のQRコードの読み取り方を紹介しよう。
■iPhoneの場合まずはiPhoneでのQRコードの読み取り方から。iPhoneでは、iOS 11から標準カメラアプリで読み取りが可能になっている。
① 「カメラ」アプリを起動させ、読み取りたいQRコードを画面の中に収める。② 画面の上部に表示される読み取り結果をタップする。
■Androidの場合続いてAndroidの場合だ。こちらもiPhoneと同様、QRコードの読み取りはサクッと完了する。
① ホームボタンを長押しして、Googleアシスタントを起動する。② Googleレンズのアイコンをタップし、読み取りたいQRコードを画面の中に収める。③QRコードをタップすると、読み取り結果が表示される。
また、QRコードは専用のアプリによって自ら作成することもできる。QRコードを開発した株式会社デンソーウェーブの協力によりつくられたアプリ「公式QRコードリーダー“Q”」は、簡単な操作でテキストやURL、連絡先、位置情報などをQRコード化できる。もちろん作成だけでなく、リーダーとしても使用可能だ。
【作成方法】「公式QRコードリーダー“Q”」をインストールして立ち上げ、右下にあるQRコードに+が付いたアイコンをタップ。「URL」「テキスト」「連絡先」場所」の選択肢が表示されるので、QRコード化したいものを選択。
たとえば「URL」を選択し、表示された窓にQRコード化したいURLを入力、「QRコードを作成」をタップすれば、数秒でQRコードができあがる。連絡先やポートフォリオのQRコードを名刺に印刷するなど、活用の幅は工夫次第だ。
なお、QRコードを作成した際には「QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です」という一文を添えることが推奨されている。詳しくは株式会社デンソーウェーブの「QRコードの知的財産権について」を確認してほしい。
スマホのカメラをかざすだけで、サクッと情報を読み取れるQRコード。昨今ではキャッシュレス化の機運も高まっており、今後はより身近なシーンで利用する機能になりそうだ。まだ使ったことのない人も、これを機にその便利さを体感してみてほしい。