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制作面から徹底解剖!――ASOBOiSMはなぜ新世代の表現者なのか?
新世代の表現者だ。今まで明かされなかった彼女の様々な面がつまびらかになるにつれて、ますますその想いが強まっていった。 3月19日(土)に表参道WALL&WALLにて初のワンマンライブ「ASOBOiSLAND」(アソボアイランド)を開催するASOBOiSM(アソボイズム)。自由自在なラップと歌、たっぷりの優しさに少しの毒・ユーモアが光るリリックで時代を射抜く注目のアーティストだが、そのクオリティ高い楽曲がどのように作られているか、これまであまり語られることはなかった。今回、初めて制作過程にスポットを当てASOBOiSMのクリエイティブ面を徹底解剖。新曲「明日はくる(feat.関口シンゴ)」が幅広いリスナーに聴かれじわじわとヒットを記録している中で、いま彼女に注目しているリスナーも多いことだろう。 普段はなかなか話せない部分を垣間見せてほしい、という私の無理なオーダーに対し、「そんなに話すことあるかな」と言いつつも貴重なエピソードを多く披露してくれたASOBOiSM。リスナーはもちろん、ミュージシャンも含め必読のインタビュー。インタビュー◎つやちゃん写真◎板垣佑介
様々な人に憑依する才能
――ASOBOiSMさんをずっと追っているんですが、意外にも全然つかめない気がするんです。振り返ると、アルバム『OOTD』(2020年)が素晴らしくて、あの頃から一段と真剣に聴きはじめました。新しい時代の空気に満ちていて、あぁ面白い人が出てきたなぁって。一方でZoomgalsにも参加されていて、キレのあるラップを見せたと思ったら最近は「明日が来る」でしっとりした歌を披露し、これがまたじんわり沁みる。非常に器用でらっしゃいますよね。そういう背景もあって、音楽的なバックグラウンドや制作面の部分を今回は深掘りしたいです。まず、ご自身で考えられている制作過程における「ASOBOiSMらしいポイント」ってあったりしますか? ASOBOiSM:私、脳内で色んな人の声を借りるのが得意なんですよ。…っていきなり何言ってんだって感じですよね(笑)。ジャンル問わず、色んな人に憑依することができる感覚なんです。歌において他人の特長をつかんでそれを自分流に表現する(サンプリングする)ってことを頭の中で頻繁にやってます。
――歌い回しを真似するってことですか? ASOBOiSM:真似とは少し違うんですけど……たとえば、「自分の機嫌は自分でとる」っていう曲(未発表)のデモを作った時には、(現時点で)スヌープ・ドッグのラップのフロウをイメージしたんです。皆さんが聴いたら全然スヌープっぽくなってないし分からないと思うんですけど、実は自分の中では韻の言い回しとか歌い方とかスヌープっぽい。そうやって昔から自分の頭の中で人の声を使って歌うっていう遊びをやってたんですよね。いろんなアーティストさんのメロディの引き出しが頭になんとなくあるんです。だから、その人の声の特長に合わせた曲を作るのは得意だし、作家業には向いてるんだと思う。「この人こういう歌い回しをしそう」とかもすごくよく考えますね。「Categorizing(feat.なみちえ)」では一部のヴァースでちょっとKOHHを意識してたりとか、「ないもんねだり」は一部ビリー・アイリッシュをイメージしてたりとか。制作過程でやりとりしている時も、「ここ誰々っぽいイメージで」っていうことが多い。その人に憑依して、歌いそうなメロディとかフロウを表現するんです。モノマネになったり、二番煎じになりすぎると自分のオリジナリティが出ないので、もちろん全てではないですし、バランスは大事ですけど。一つの楽曲の中に何人もの人が降りてきてたりします。
――だから、バラエティに富んだフロウが出ているんですね。「Wasabi」とか聴いていると、途中ラップぽくなって全然違う表情が出てくるじゃないですか。ドキッとするリスナーが多いと思うんです。 ASOBOiSM:あと、私の場合は一番(ワンコーラス)を作ったらすぐにアレンジャーさんに投げちゃうんですよ。そうすると、(アレンジが)戻ってきてもう次に2番の歌詞をを作る時には自分が聴いている曲が変わってるし自分の感覚も変わっているので、違うイメージが沸いて新しいフロウが出てきたりする。一人で作ってないからこそ、一度自分の手を離すことで曲が違うものになっていくんですよね。
――「誰々っぽく」というのは制作過程において誰しもがインスピレーションを得るためにやっていることだと思うんですが、そこまで意識的に色んな方への憑依を試みている人はあまりいないんじゃないでしょうか。 ASOBOiSM:自分では特殊能力だって思ってます。曲を聴いているだけだと、例えばVaundyさんとか、何でもできてどの系統も器用な方という印象があるので、だからどうやって作ってるのか気になります。
――でも歌い回しや歌唱スタイルの参照/引用っていう視点は面白いですね。ストリーミング以降の感覚かもしれないですけど、そういった身体レベルのサンプリングを意識的に行っていると。 ASOBOiSM:そもそも、音楽に限らずものづくりが好きっていうのがあるんです。ゼロからイチを作るのが大好きで、別に作った後にそれを愛でるとかもあまりなく。大工さんになって家建てたりするのかっこいいなぁ、とか純粋に思います。10代の時にギター弾きたいんだけど技術が追いつかなくてカバーできないから自分で作って歌った。そうしたら友達に褒めてもらえた。そこから音楽作るの楽しいなぁって思って今に至ってるくらいだし。作ったことでみんなが刺激を受けてくれて……あぁ、だから大工は家を作るのか!って思うんですよ。私はDIYとかも好きだし、編み物したり料理したり絵を描いたりも好き。美術展に行ったらすぐに自分でやりたくなって家に帰って描いちゃうので、やっぱり作り手として影響を受けやすいんでしょうね。
リリックが生まれていく瞬間
――受けた刺激が、すぐご自身の表現欲求に向かうという。それは生粋のアーティストですね。ちなみに、まっすぐな優しさにちょっとのユーモアと毒を織りまぜた歌詞もASOBOiSMさんの特長の一つにあると思うんですが、リリックは普段どのように書かれてるんでしょうか。 ASOBOiSM:歌詞は普段スマホのメモ帳にたくさん書いてますね。感情を書き留める感じです。(画面を見ながら)えっと、最新のは……「金取るよ」っていう仮タイトルの歌詞ですね(笑)。この前、女の子の友達と話してた内容を元に書いたやつ。男性が多い現場で、セクハラギリギリのようなどぎつい下ネタを言われて、こっちが笑って対応してあげないと場がもたない感じだったんですよ。もちろんその場は円滑に進めないといけない気がして何も言わずに笑顔でやり過ごしましたけど。後日、そのことを「まじで一人接待キャバクラみたいだよね」「まじ金取りたい!って感じだよね」って話で友達と盛りあがって。でも、こういうのって女性はみんなが経験してることじゃないですか。特に音楽業界の現場って男性が多い傾向にあるから、自分が性的対象と見られているようなほんとにつまんない話をされると「あなたからお金取りますからね?」って思う。メモには、「対処できない女はつまんない/こっちのセリフじゃボケ」って書いてますね。歌詞にする時は、こういうのをベースに整える作業をしていきます。
――たとえば「金取るよ」だったらどのように整えていくんでしょう。 ASOBOiSM:この曲だったら、ちょっとプライド高い感じだし攻撃的な曲がいいいかなーとか。あと、フックはたとえば「givememoney」っていうフレーズをループさせてみようか、って(笑)。そういった感じで色々沸いてくるアイデアを、最近だとSpliceとかで合うビートを探していくかな。もしくは、ギターを弾きながらいいフレーズを見つけたり。そうやってデモトラックを作って、そこから先のトラックアレンジは信頼しているプロの方にお任せします。
――曲作りの時点ですでにMVのイメージも固まってるんですか? ASOBOiSM:「ないもんねだり」は、曲作った時点でビリー・アイリッシュの「BadGuy」みたいな強い色と絵が欲しいなっていうイメージはありました。でも普段はそこまでは固まってないかな。漠然と色の方向性とかはありますけど。イメージはそのくらいで、後はやっぱり「こういう人と組みたい」とか「今回はこういう人が合いそう」といった希望の方が多いです。
――もう一つ私が不思議に思っているのは、ASOBOiSMさんの曲はなぜあんなにも整理整頓されてるんだろう?っていう点なんですよ。アルバム『OOTD』も、あれだけ曲数があっても全編通して綺麗にそぎ落とされてすっきり整理されています。 ASOBOiSM:でも、あの作品は初めからアルバム作ろうっていうスタンスで作ってるわけではないんですよね。基本的にはシングルで、それが集まってアルバムになってる。だから、なおさらクリエイターの方達と一緒に見ている着地点が同じってことなのかもしれないです。コロナ前は一緒に合宿してましたからね。みんなで沖縄行ったり。みんないい人すぎるんですよ!めちゃくちゃ尊敬してます。私は、当たり前だけどなるべくクリエイターの方達と「人」として関わりたいって思っているんですね。今は(コロナ禍だから)多少仕方ないけど、データ上だけで完結するのって気持ち悪いなぁって。その人を好きになって、ヴァイブスを確かめ合うって大事です。皆ビジネスありきじゃなくて、純粋に良いものを作りたくて成り立ってる。レーベルの方から「こういうクリエイターどう?」とか提案されたりもするんですけど、私そういうのに全然反応しないんです。(笑)
――なるほど。ASOBOiSMさんは全てをご自身でやるというよりは、むしろ「チームASOBOiSM」の監督なんですね。種をまいて、咲く方向性を示せば、後は信頼する仲間が四方八方に花を咲かせてくれる。それって、いわゆる社長みたいな役割に近い気もします。実際、若い起業家とか近いマインドだと思うんですよ。結局、そういう人たちも企業活動を通して自分の存在価値を問うているわけですよね。今の時代の自己表現、という形がすごくする。 ASOBOiSM:ある意味、生き方の提示をしているという側面はあるのかもしれない。友達とかには「自分の好きなことやりたいことを貫き通してるのほんとすごいよね、普通無理だよ」って言われますしね。常にそうありたいとも思います。
ヒップホップ、ラップとの距離感
――ASOBOiSMさんって普段どんな音楽を聴くんですか? ASOBOiSM:私、そんなに詳しくないし熱心に聴く方じゃないんですよ。「今日は音楽聴きたくない」っていう日が多くて、たまに「音楽嫌いなの?」って言われる(笑)。普段、滝の音とか川の音とか聴いてるし、移動する時はNETFLIXのドラマとかYouTubeのお笑い動画を流しながら音声だけで聴いてます。その方が落ち着くんですよね。
――へぇ、意外ですね!サイプレス上野さん然りZoomgalsのメンバー然り、ASOBOiSMさんの周りってたくさん音楽聴いている方が多いから、てっきりそういうイメージでした。 ASOBOiSM:すごい音楽精通してそうって思われがちなんですけどね。先輩アーティストの方たちと飲ませていただいた時に、当然ずっとヒップホップが流れてるんですけど私全然知らなくて。「これ知ってる?」って訊かれて「知らないです」って答えたら「お前ラッパーじゃねえな!」って言われてしまい、「私、シンガーソングライターですけど……」と思いました(笑)。他にも、GANGSTARRが流れてて「この曲名言ってみろよ」「お前こんなのも知らないのかよ?」とか、だいたいいつもそんな感じですよ。音楽の聴き方ってこんなに自由じゃないの?!って思いません?
――ヒップホップ界隈に限らず、そういう光景ってまだまだ多いですよね。 ASOBOiSM:私はラップをはじめた時に、これはちゃんと勉強しないといけないな、と思ったんです。ラップをやる以上、何も知らずにそのカルチャーを借りるのはダサいので。だから、アンダーグラウンドも含めて勉強しました。雑誌読んで、いとうせいこうさんが対談で話してる作品を片っ端から聴いていったり。ヒップホップに対するリスペクトは根底に絶対ないといけないと思ってました。ただ、やっぱり知識が追いつかなくてオールドスクールの曲は全然知らなかったりする。でも、知らないことは恥ではないと思うんですよ。知らないなら聴けばいいし、全部知ってるから偉いわけでもない。私は知らないことは隠さずに言うし、それでいいんじゃないかな。だから、ずっと勉強中なんです。「すみません、知らないから教えてください」って言って教えてもらう。
――それはもう、全面的にそうですよ。知っている方が確かに音楽はより楽しめるかもしれないけど、だからといってそれを押し付けちゃうと……。 ASOBOiSM:皆さん、辞書のように知識が頭に入ってるじゃないですか。歴史の教科書の人名覚えるのってめちゃくちゃ大変だった。それなのに、何年に誰のどんな作品が出たとかってみんなどうやって覚えてるんですか?(笑)本当に不思議。自分にそういう能力がない分、憧れはありますね。マニアはかっこいい。
――ASOBOiSMさんはラップの技術が高い分、皆何か期待しちゃうしお節介したくなるのかもしれないですね。 ASOBOiSM:ラップの技術はちゃんと磨いています。でも、実際はサイプレス上野さんやZoomgalsと一緒にやらせてもらって「ラッパー」という肩書も享受することになっただけだから、ヒップホップの人たちに「これはヒップホップじゃない」と言われても当然だと思う気持ちもあります。
――ASOBOiSMさんが、ラップという手段を使っている必然性ってどういうところにあるんですか? ASOBOiSM:曲を作ってて、そこに必要性を感じたら歌じゃなくてラップを選択しますね。ラップじゃないと語れないストーリーが確かにある。私はわりと可愛い系の声質なので、ドスが効いているわけじゃないからこそ、直接的な気持ちを強く伝えたい時はラップの方が相性がいい。
――ラップに惹かれるきっかけとして、MOROHAさんのライブを挙げていましたね。 ASOBOiSM:そうですね。あと不可思議/Wonderboyとか、GADOROさんもそうなんですけど、言葉をエモーショナルに操る人が好きなんですよね。女性でそういうラップをする人ってあんまりいない気がする。田我流さんの「ゆれる」みたいな。そういえば、昨日も美容院で「ラッパーさんなんですか?え、じゃあ周り怖い人とかヤンキーとかばっかりなんじゃないですか?」って言われて。「私、スニーカーでぴょんぴょん系なんで」って言ったら「めっちゃ親近感沸きます~!」って言われたんですよ(笑)。いないんですよね、「ゆれる」系の女性ミュージシャンが。
――最後に、3月19日に予定されている初のワンマンライブに向けた意気込みを聞きたいのですが、なかなか状況が状況ですね……。(※インタビューは1月末、コロナウイルスによるまん延防止等重点措置が発令されていた) ASOBOiSM:一生懸命やってきたからこそ、心折れそうですよ……。やれるだろう、と信じるしかない。でも今はまだこの状況でチケット買えない気持ちも分かるから。祈るしかないです。全力で準備はします。
――3月19日にライブでお会いできることを祈っています。
"ASOBOiSLAND"-ASOBOiSM5thAnniversary/1stOnemanLive-
日時:2022年3月19日 18:00〜19:30(17:00開場)会場:WALL&WALL 東京都港区南青山3-18-19フェスタ表参道ビルB1料金:前売4,100円(1D)
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出演:出演者:ASOBOiSMゲスト:関口シンゴ、サイプレス上野、森心言、なみちえ、isseiDJ:MARMELOVJ:RyomaMatsumoto(theMcFaddin)【注意事項】※規模縮小の為、入場者数に限りがございます。※入場時の混雑回避の為、本公演はドリンク代を含む販売価格とさせていただきます。※予定枚数に到達した場合、当日券の販売は行いません。※本公演はオールスタンディングの公演となります。※小学生以上の方はチケットが必要となります。なお16歳未満の方につきましては保護者の同伴が必要となります。※未就学児のお子様をお連れのお客様は入場時に未就学児であることの各証明書が必要となります。-新型コロナウイルス対策-※会場内では常時マスクをご着用下さい。※こまめに手指の消毒を行って下さい。※体温が37.5℃以上のお客様は入場をご遠慮ください。※大声や歓声を禁止させていただきます。