USB/Wi-Fi接続されたAndrod端末の画面をPCで表示・操作できる「scrcpy」

USB/Wi-Fi接続されたAndrod端末の画面をPCで表示・操作できる「scrcpy」

 「scrcpy」は、USB/Wi-Fi接続されたAndrod端末の画面をPCで表示・操作できるアプリケーション。「GitHub」でホストされているオープンソースプロジェクトで、ライセンスは「Apache License 2.0」。Windows/Mac/Linuxに対応しており、プロジェクトサイトのリリースページから無償でダウンロードできる。なお、編集部ではWindows 11で動作を確認している。

 最近のWindows 10(Windows 11も含む)には「スマホ同期」というアプリが同梱されており、Androd端末のスクリーンを手軽に遠隔表示・操作できる。しかし、事前にコンパニオンアプリ「スマホ同期管理アプリ」をAndroid端末へインストールし(Microsoftと一部Samsung製スマホではプリインストールされている「Windows にリンク」が利用可能)、「Microsoft アカウント」で紐づけておく必要がある。あくまでもプライベートで用いることが想定されており、スマホの操作方法を「Zoom」で共有したいといったパブリックなシチュエーションにはあまり向いていない。自分の「Microsoft アカウント」を紐づけたり、勝手にアプリをインストールすることが憚られるケースもあるだろうが、その場合も「スマホ同期」アプリは使えない。

 その点、「scrcpy」は開発者機能(adb デバッグ)を有効化しておく以外の事前準備が不要なのはメリットだ。開発機であればすでに有効化してあることも多く、その場合はPC側に「scrcpy」さえあれば、USBケーブルで接続するだけでAndrod端末のスクリーンを表示・操作できる。

USB/Wi-Fi接続されたAndrod端末の画面をPCで表示・操作できる「scrcpy」

 さらに、追加の作業は必要となるものの、「スマホ同期」と同様、Wi-Fi経由での操作も可能。接続に「Microsoft アカウント」を用いることに不安を覚えるユーザーにとっては、「scrcpy」がオープンソースで開発されていることも安心できる要素といえる。

 そのほかにも、豊富なコマンドラインオプションで表示を自由にカスタマイズ(拡大・縮小・回転など)できる点や、操作の録画が行えるのもメリット。動作が軽い点、キーボードショートカットキーが豊富に用意されている点、ドラッグ&ドロップでアプリ(APK)のインストールやファイルのコピーが可能な点も魅力だ。後述のデバッグを許可する手順が完了していることが前提とはなるが、ディスプレイが損傷したスマートフォンをテスト端末として活用したい場合にも役立つかもしれない。

 「scrcpy」を利用するには、前述のようにあらかじめAndrod端末の開発者機能(adb デバッグ)を有効化しておく必要がある。「Android 4.2」以降の場合、「設定」アプリの[デバイス情報]-[ビルド番号]画面を7回タップすると[開発者向けオプション]画面が有効化されるので、[USB デバッグ]オプションをONにしよう(本稿ではWi-Fi デバッグに関しては省略する)。PCへAndroid端末を接続すると、USB デバッグを許可するかどうかを問うポップアップが現れるので、[OK]ボタンを許可する。これでAndroid端末側での準備は完了だ。デバイスによっては若干操作や画面が異なる場合があるので注意したい。

「設定」アプリの[デバイス情報]-[ビルド番号]画面を7回タップして[開発者向けオプション]画面を有効化(スクリーンショットは「Pixel 6」の場合)[USB デバッグ]オプションをONにPCへAndroid端末を接続すると、USB デバッグを許可するかどうかを問うポップアップが現れるので、[OK]ボタンを許可「scrcpy.exe」を実行して「Pixel 6」へ接続した様子

 「scrcpy」からAndroid端末へ接続するには、実行ファイルをダブルクリックするだけでよい。接続ウィンドウが現れ、Android端末の画面表示・操作が可能となる。最近のスマートフォンは解像度が高いので、当倍率でスクリーンを表示すると接続ウィンドウが大きくなり過ぎて扱いに支障をきたすかもしれない。その場合は、コマンドラインから適切な起動オプションを指定して実行することになる。以下によく使いそうな起動オプションを挙げておくので参考にしてほしい。詳しくは公式ドキュメントを参照のこと。

# 最大サイズを 1,024px に制限./scrcpy.exe --max-size 1024# ウィンドウの表示位置と幅・高さを指定./scrcpy.exe --window-x 100 --window-y 100 --window-width 800 --window-height 600# スクリーンの一部のみを切り取り(クロップ)。Oculus Goで役立つ./scrcpy.exe --crop 1224:1440:0:0# 接続ウィンドウを常に最前面に表示./scrcpy.exe --always-on-top# 接続ウィンドウをフルスクリーンで表示([MOD]+[F]キーでも可)./scrcpy.exe --fullscreen# 接続ウィンドウを 90°×n 回転([MOD]+[R]キーなどでも可)./scrcpy.exe --rotation 1# 接続ウィンドウを表示のみに(操作禁止)./scrcpy.exe --no-control# 接続時にデバイスをスリープさせない./scrcpy.exe --stay-awake# スクリーンをキャプチャーして保存scrcpy --record file.mp4

 また、さまざまなキーボードショートカットが用意されているので活用したい。[MOD](装飾)キーはWindows環境の場合、既定で左の[Alt]キーまたは[Windows]キーとなっている。

操作ショートカット
ホームボタン[MOD]+[H]キーまたはマウスの中クリック
戻るボタン[MOD]+[B]キーまたはマウスの右クリック
タスク切り替え[MOD]+[S]キー
メニュー表示[MOD]+[M]キー
ボリューム調節[MOD]+[↑]/[↓]キー
電源ボタン[MOD]+[P]キー
電源オンマウスの右クリック

 クリップボードの操作(切り取り・コピー・貼り付け)の操作は一般的な[Ctrl]キーとの組み合わせが利用可能。Android端末側が変更されるとそれがPCにも同期される仕組みになっており、テキストデータのやり取りは容易だ。ただし、[Ctrl]キーとの組み合わせでは不都合のあるアプリもあるので、[MOD]キーとの組み合わせでもできるようになっている。