EVsmartブログ電気自動車や急速充電器を快適に 日産と三菱がいよいよ軽EVの発売時期を明言/ミニキャブ・ミーブも進化する? 人気記事 最近の投稿 カテゴリー

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※冒頭写真は2019年の東京モーターショーで発表された軽EVコンセプトカーの『IMk』。

NMKVの企画による初めての新型EV

三菱自動車と日産は2021年8月27日に、両社で設立したベンチャー企業『NMKV』で開発を進めている軽自動車のEVを、2022年度初頭に発売する予定であることを発表しました。日産にとっては2000年に発売された『ハイパーミニ』以来、三菱自動車にとっては『i-MiEV(アイミーブ)』以来の新型軽EVになります。『NMKV』は、軽自動車の商品企画やプロジェクトマネジメントに特化したジョイントベンチャーで、三菱自動車と日産が50%ずつの出資をして2011年に設立しました。

発売予定が2022年度初頭ということは、少なくとも来年の夏前には店頭に車が並ぶのではないかと思われます。その頃には新型コロナも落ち着いて、気楽に販売店に行けるようになっていることを祈りたいと思います。

新型の軽EVは、車体サイズは全長3395mm、全幅1475mm、全高1670mmになる予定です。とはいえ、軽自動車は全長と全幅を規格いっぱいにすると、どの車も同じ寸法になるので、これだけだとよくわかりません。ちなみに新型EVの寸法は、三菱自動車の『ekワゴン』と全長、全幅が同じで、全高が10mm~20mmほど高くなっています。スズキのハスラーは、まったく同じ寸法です。

バッテリーの搭載容量は20kWhになる予定です。また災害時の非常用電源としても使えるV2H機能の採用も計画されています。生産は三菱自動車の水島工場で行い、日産へも車両を供給していきます。

AC100V出力のコンセントについては説明はなく、三菱のリリースに「万が一の際は、蓄えた電力をV2H機器を介して家庭へ供給」とあるので、MiEVパワーボックスのような機器が必要なのだと思われます。日産にも車両だけでなく、V2H機器のなかでは格段にお手頃なMiEVパワーボックスも合わせてOEMなりで供給、可能であればリーフやアリアでも使える仕様(現在はi-MiEVやミニキャブ・ミーブでしか使えません)にして発売してほしいところです。

バッテリーをどこから調達するのかや、バッテリーの仕様は公表されていません。具体的な航続距離の目標値も発表されていませんが、軽自動車で20kWhを搭載していれば1回の充電で150km前後の航続距離を確保できそうです。ラストワンマイルと言わず、ふだん使いの車としてもいける性能になるのではないでしょうか。

待望の「20kWh、200万円」EV

予定されている価格は、補助金込みで200万円です。軽EVの補助金は、現行の『ミニキャブ MiEV(ミーブ)』の16kWh仕様が17万円なので、バッテリー搭載容量を考えるとこれより少し多くなる可能性が高く、そうすると車両本体価格は220万円前後という感じでしょうか。

EVの補助金については、日経新聞電子版が8月24日、経産省が2022年度予算を2021年度の約2倍に増やすとともに、軽EVの数も増えると予想されることから補助額の上限引き上げを検討していることを報じました。

三菱自動車と日産が補助金引き上げをどのように考えるかによりますが、発表されているリリースでは、「お客様の実質的な購入額が約200万円からとなる見込み」(三菱自動車)、「実質購入価格は約200万円からとなる見込み」(日産)とあるので、補助金の額が上がっても購入価格は200万円のままかもしれません。

希望を言えば、補助金引き上げが購入価格の軽減につながってほしいところですが、どうなるかはメーカーのみぞ知る、です。三菱自動車さん、日産さん、よろしくお願いいたします。

ニュースリリースでは、運転支援などの先進技術も搭載する予定になっています。どういった装備になるか、内装はどんな感じなのかなど、いろいろ見ていくポイントはありつつも、価格や基本性能だけを見ると、内燃機関(ICE)の軽自動車のライバルになる可能性もあります。軽自動車と一口に言っても、いろいろなオプションを付けると200万円前後になりますし、そもそも軽にする理由は、本体価格だけでなく維持費の問題が大きかったりします。

とは言え、欲を言えば、あと40~50万円安いといいなあとは思います。テスラ『モデル3』のスタンダードレンジ2021年モデルは、バッテリー搭載量が54kWh(EVsmart調べ)で、税込みの車両本体価格が439万円です。単純に割り算をすると、バッテリー1kWhあたり約8万1000円になります。

『モデル3』のロングレンジになると79.5kWhで509万円なので、1kWhあたり約6万4000円です。グレードが上がるとお得感が増すのは世の常ですが、EVの価格がここまで来ていることを考えると、お買い得感を強調するであろう軽EVだからこそ、もうひと声がんばってくれるといいなあと思ってしまいます。もし『モデル3』のロングレンジのようなコストで新型軽EVが発売されるなら、価格はなんと128万円。スタンダードレンジと同等でも162万円です。

このくらいの価格になるのなら運転支援システムとかを端折っても、ICEの軽を蹴散らして大ヒットするレベルの競争力をアピールできるのではないでしょうか。

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とはいえ今は、「20kWh/200万円」、言い換えれば「1kWh/10万円」の軽EV登場が、停滞している日本市場を活性化することを期待したいと思います。

ところで『ミニキャブ・ミーブ』の今後について

三菱自動車と日産から2022年を目途に軽EVが出ることは、すでにいろいろなところで報じられています。EVsmartブログでも、期待を込めて触れたことが何度かありました。

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日本独自の軽規格の車は、ガラパゴスのひとつだと言われる一方で、日本の使用形態に合っていて効率的な車だという見方もあります。筆者も、EVに関してはそんなふうに思うことがよくあります。

そんな軽規格の中でもEVに合っているのではないかと常々思っているのが、軽の商用車です。そして軽EVの商用車といえば、『ミニキャブ・ミーブ』です。

軽EVは、元祖と言えるような『i-MiEV』の生産が終了したことから、『ミニキャブ・ミーブ』の行く末が案じられる状況になっていました。けれども三菱自動車は7月に、タイの物流会社、Eternity Grand Logistics Public Co., Ltd.と軽商用EVの実証実験を実施する覚書を締結したことを発表していて、すぐにはなくならない雰囲気もありました。

ということで、三菱自動車広報に新型軽EVのことを聞くついでに、『ミニキャブ・ミーブ』のことも確認してみました。

結論から言えば、「終わりではない」とのことです。今後は、軽商用EVを重要視していくそうです。

ただし現状は、在庫を販売している状態なので数が少なく、決まった仕様のものしか流通していないそうです。販売店によっては『ミニキャブ・ミーブ』の取り扱い状況が不明になっていることがあるのは、そのためかもしれません。

三菱自動車は2021年5月11日に、2020年度~2022年度の中期経営計画をアップデートしました。中期経営計画ではEVの重要性をアピールしているだけでなく、特に、軽商用EVの将来性を強調しています。中期経営計画には次のような言葉があります。

「軽商用EVは、物流における「ラストワンマイル問題」へのひとつの最適解ではないかと考えております。ミニキャブ MiEVは、モーターのパワー、静かさや、給油不要の利便性など、使い勝手の良いはたらく電気自動車として高い評価を得ています」

「カーボンニュートラルの社会への関心の高まりにより、すでに納入実績がある日本郵便様をはじめとして商談が増加しております。6月までに約20社に200台を試験導入するとともに、一部企業様とは共同で商品の改良を進めて参ります。商品要望を集め、お客様の様々なご要望を反映した改良モデルを23年以内に導入する予定です」

「今後物流ネットワークの構築が本格化するASEANにおいても、商用軽EVの商談が始まっております。今後商品改良や実証実験をさらに展開し、様々な業界の企業様とともに社会貢献を果たしていきます」

要するに、ゼロエミッション、脱炭素を進める中で、商用の軽EVは欠かせない存在だということですね。新型の軽商用EVも計画にあるようです。

中期経営計画ではこの他、EVによる「V2X」への取り組みを進め、電力の調整ソースとして活用していく計画があるとしています。こうしたことに筆者はまったく気がついていませんでした。自身の不明をお詫びします。

そんなわけなので、『ミニキャブ・ミーブ』はこれからも進化を続けてくれそうです。個人的には、軽の商用EVは、言われているようなラストワンマイルの使い方もありですが、地方都市では市民の足として広く使われているように感じます。千葉の自分の実家の周辺を見回しても、そう感じることは多いです。

地方都市は、毎日、車を使うとはいえ、走行距離はそれほど長くありません。だから人が乗るスペースは、とりあえず乗れれば十分だったりします。それより積載能力が優先されるので商用車のメリットは大きくなります。それにガソリンスタンドが急速に減っていたりするので、給油するのに10kmとか走らないといけないこともあります。往復10kmならまだしも、片道10kmくらいのこともあります。

これからますます、ガソリンスタンドが減っていく地方都市では家で充電可能なEVの利用価値は高くなりますし、経費も安く済みます。

という話はEVのメリットとしてよく出てくる常套句ですが、とにもかくにも、新型軽EVの派生版として、新型『ミニキャブ・ミーブ』が早く出てくることにも期待したいと思います。

(文/木野 龍逸)