「ポータブルWi-Fi」レビュー
25/03/2022
家でのエンタメが大事な昨今だから。
ラスベガスのホテル兼カジノのボールルームや展示会場がTVメーカーの戦場に変貌し、各社がディスプレイの明るさや色の豊かさ、本体の薄さを競う家電の祭典CES。今年も例に漏れず、SONY(ソニー)やSamsung(サムスン)、LGといったトップ集団も、それを追うTCL、Hisense(ハイセンス)、Panasonic(パナソニック)も、低価格液晶からフラッグシップのminiLED、有機ELまで、それぞれが新たなラインアップを打ち出しました。
CESに出てきた新たなTVの技術や機能の中で一番の見どころは、サムスンのQD-OLEDやLGのOLED Evo、OLED EXといった従来の有機ELの欠点を補完するいろいろな技術です。画面の焼き付きに関してはminiLEDって手があり、今回のCESではたくさん発表されました。どれもやたら高いですが。
どんなタイプのTVにしても、今年のモデルはどれも4Kでリフレッシュレート120Hzといったゲーミング系機能とか、見たいコンテンツをスムーズに選ぶためのスマートなツールが入ってます。
CESでは無数のTVが登場しましたが、本当に光ってた製品はいくつかしかないので、以下にまとめていきますね。
ソニーがCESで発表したBravia XR A95Kは、サムスン製のパネルを搭載しています。現行のフラッグシップモデルでは、LGの有機ELパネルをカスタムのプロセッサーでチューニングしてるんですが、ソニーはLGとサムスン、どっちかに付くってわけじゃないんですね。
A95Kは55インチと65インチの展開で、どちらもQD-OLED(量子ドット有機EL)パネルを搭載してます。なんか聞いたことある名前だなって思ったら、それはQD-OLEDが、有機ELの発光するピクセルを前からサムスンのTVでよく使われてる量子ドットレイヤーと組み合わされているからです。こうすることで有機ELの良いところ(高いコントラスト比と深い黒)と、量子ドットレイヤーの良いところ(より広い色域とかピーク輝度)の両方が手に入ります。
入力ポートはHDMIが4つ、うちふたつはHDMI 2.1をフルサポートなので、最近のゲーム機での4K・120Hzのプレイが可能です。可変リフレッシュレートも対応です。
ちなみにサムスン自身はパネルを提供するだけで、サムスンブランドのQD-OLED TVはCESに出てこなかったので、近々発表があるんでしょうね。
LGは今回、有機EL TVとしては自社史上最小と最大の製品を両方出してきました。最小は42インチのお手軽版、最大が97インチのLG G2で、非プロジェクターとしては一番ホームシアター度が高いです。LG G2はLGの中だけじゃなくコンシューマー向け有機EL TV全体の中でも最大で、LGのOLED Evo技術が搭載されてます。
OLED Evoは放熱の仕組みとアルゴリズムの改善で輝度を向上したとされていて、LGの売り文句通りなら「有機ELは暗い」っていう欠点をカバーしています。そのほかに今年のアップデートは、ベゼルが細くなったこと、WebOS 22へのアップグレードでユーザープロフィールを個々に設定できるようになったことなどがあります。
LGのTVにおける最高峰G2シリーズには、97インチのほかに55インチ、65インチ、77インチと、新たに83インチモデルも加わりました。最初に挙げた42インチモデルは、その下のC2シリーズの中に入ってます。
TCLも大きいことは良いことだの精神で、98インチのXL Collection QLED TVを発表しました。TCLのTVには以前はRokuが入ってたんですが、去年からGoogle TVベースのTVも作ってます。TCLのGoogle TV搭載モデル、最初は動作不安定で販売停止なんて事態もありましたが、その後のソフトウェアアップデートで問題は解消しています。
映画館に行くのはまだ心配な昨今ですが、98インチのXL Collection QLED TVがあれば自宅で映画館気分です。画面が大きいだけじゃなく、可変リフレッシュレートとかオートゲームモード搭載、Dolby Vision、Dolby Atmos対応もしています。
XL Collection QLED TVは8,000ドル(約91万円)と、動悸が早まりそうなお値段ですが、他の巨大画面TVよりもだいぶお手頃ではあります。
サムスンのmicroLED技術は、最終的に有機ELの後継になると考える筋もありますが、今それを搭載してるTVはやたら巨大で高額なモデルばかりです。でも、今回のCESでサムスンが出してきたのは85インチのmicroLED TVで、そこそこ広いリビングなら収まりそう。価格は未発表ながら、たぶんそれほど安くはならないと思われ、買えるのはかなり余裕のある人に限られそうです。ちなみに去年の110インチモデルは、15万ドル(約1700万円)でした…。お値段はさておき、microLEDには引き続き注目していきたいです。
サムスンはminiLEDもがんばってます。QN900B 8K Neoは去年のモデルと大きく変わりませんが、うれしい改善点もいくつかあります。
一番大きな変化はHDRマッピングなるもので、輝度スケールを12bitから14bitに高め、明るさの精度を上げています。またObject Depth Enhancer(直訳:物体深度拡張器)というAIを使った手法で、風景の中で前景/被写体を背景から見分けて、深みを表現できるとしています。あとはShape Adaptive Light(形状調整ライト)という技術でLEDが出す光の形を変化させ、ハロー効果を減らし、明るさやコントラストを高めるとしています。
もうひとつ改善されたのは音響面で、画面に映るものに合わせて音の方向を変化させるObject Tracking Sound、周りの音を検知してTVの音を大きくするActive Voice Amplifier、環境に合わせて音を調整するSpacefit Soundといった機能が入ってます。ただサムスンのおすすめは、当然ながらサムスン製のサウンドバーを使うことです。QN900B 8K Neoの価格は未発表ですが、2021年モデルは65インチが5,000ドル(約57万円)、85インチが9,000ドル(約103万円)といった感じでした。
ソニーはQD-OLED TVも出しつつ、miniLEDにも目配りしてます。フラッグシップとなるBravia Z9K Master Series 8KはminiLEDで、有機ELのメリットを生かしながらもより明るく、焼き付きリスクはないとしています。
Bravia Z9K Master Series 8KはソニーのCognitive Processor XR搭載で「もっとも広い色域と自然な美しさの色を再現」、プロセッサの改善により前景と背景の処理が行われ、画像の3D表現を拡張してます。また「XR Backlight Master Drive」アルゴリズムが強化され、明るいピクセルが暗いピクセルににじみ出すブルーミングを防ぐとしています。
Z9K Masterシリーズは8K解像度で75インチ、85インチの展開。価格は今後発表ですが、ハイエンドな方向になることは間違いありません。
パナソニックからは、55インチ、65インチに77インチが加わったLZ2000が出てます。前モデルよりあらゆる面で改善され、より明るく、ゲーム系機能も追加され、前面スピーカーアレイ搭載です。
画質機能では、センサーを使って周囲の色温度を検知することで映像を「より自然」に、暗いところでも見やすく調整します。また明るさを向上する機能、Master OLED Proってのもあります。あとはGame Control Boardでは、フレームレートやHDRメタデータ、入力ラグといった情報を表示させたり、暗い部分の視認性を高めて隠れた敵を見つけやすくしたりといったことが可能。他にもNvidiaのGPUの自動検知や60Hzゲーミングでのレイテンシー改善、HDMI 2.1ポートでの4K・120Hzゲーミング対応など、ゲーム系機能が強化されてます。
LZ2000の価格は、今年夏の発売前に発表予定です。
ハイセンスは高価格モデルとほぼ変わらないTVを低コストに作ることで定評があります。今年はフラッグシップのU9HとU8Hに、ディミングゾーンが1,280以上となるminiLED TVをもたらしました。
U9Hのほうが先進的かもしれませんが、U8Hのほうがずっと手頃で、Hisense自身も「ベストなオールラウンドTV」と評価しています。55、65、75インチで展開するU8Hは、最大輝度が1,500ニト、発売は今年夏を予定、お値段1,099ドル(約12.5万円)からとなってます。ハイエンドなラインナップには今どきの機能が盛りだくさんで、120Hzのリフレッシュレート、HDMIでの可変リフレッシュレート、ゲーム向けの低レイテンシーモードも入ってます。