私が12個のスマートスピーカーと暮らすワケ

私が12個のスマートスピーカーと暮らすワケ

「ものぐさライター」を自称する太田百合子さんが、12個のスマートスピーカーと同居する理由とは……?(イラスト:いのうえさきこ)

子供の頃から朝が苦手……そんな私が心底憧れたのが、SFアニメで目にした「全自動起床マシーン」でした。時間になるとベッドが起き上がり、全自動で歯磨き。寝ぼけている間に着替えも食事も済ませ、送り出してくれる……。あらゆることが面倒くさく、毎日「どうやってラクをするか」ばかりを考えていた当時の私には、とても優雅な夢のマシーンに思えました。

あれから長い年月が流れた今も、全自動起床マシーンは残念ながら製品化されていませんが、IoTのおかげでかなり近いことはできるようになりました。

睡眠にあわせて自動でリクライニングするベッドに、全部の歯を一度に磨けるマウスピースのような電動歯ブラシ。ひと声「おはよう」と話しかければ、カーテンが開き、エアコンや照明が点いて音楽が流れ、キッチンからはコーヒーの香りが漂ってくる……。今、そんなつながる家電たちの中心にいるのが、「スマートスピーカー」です。

スマートスピーカーは「話すだけ」で家電が動く!

「スマートスピーカー」はマイクとスピーカーを備え、Wi-Fiにつながるだけのシンプルなデバイスですが、インターネットの向こう側の音声AIアシスタントと「話すだけ」でいろんなことができる、夢のマシーンでもあります。キーボードもマウスも、スマホのようなタッチ操作すら必要のない、私のような超のつく面倒くさがり屋にはまさにうってつけ。

世界最大のデジタル見本市CESで、初めてAmazonのスマートスピーカー「Echo」とAIアシスタントの「Alexa」に出会ったときは、話すだけで魔法のように家電が動く様子に、心底感動しました。ちなみに米国ではすでに、Alexa対応の全自動トイレも製品化済み。もはやいつ、全自動起床マシーンがリリースされてもおかしくありません。

CESでの衝撃の出会いから数年が経ち、今我が家では家中のありとあらゆる場所に、12個のスマートスピーカーを設置しています。

AIアシスタントもAlexaだけでなく、Googleの「Googleアシスタント」、LINEの「Clova」、Appleの「Siri」の4人(!?)に増えました。まだ全自動とはいきませんが、すでにいくつかの家電も音声で操作できるようになっています。おかげさまで、たくさんのスマートスピーカーを使う変な女として、テレビ番組にも出演させていただきました(※2020年4月21日放映『マツコの知らない世界』スマートスピーカーの世界)。

家のスマートスピーカーが12個まで増えたワケ

よく「1ダースものスマートスピーカーをどう使い分けているのか」と聞かれるのですが、たくさん設置しているのは家のどこにいても、大声を張り上げることなくスマートスピーカーを使えるようにしたかったからです。

私が12個のスマートスピーカーと暮らすワケ

オフィス、リビング、寝室、キッチン、洗面所と少しずつ使える場所を増やしてきた結果、今では家のどこで呼びかけても、いずれかのスマートスピーカーが反応するようになりました。

最近はスピーカーに加えて、ディスプレイやカメラ、レーダーセンサーを搭載したデバイスも仲間入りしていて、そういったデバイスを適材適所で使い分けることもしています。

たとえばディスプレイ&カメラを搭載するデバイスは、デジタルフォトフレームのように写真を表示したり、ビデオ通話ができるので、離れて暮らす家族といつでも話せるように、デスクの上に設置。またディスプレイ&レーダーセンサーを搭載するデバイスは、レシピが見やすくジェスチャー操作ができるので、手が濡れがちでタッチ操作がしにくいキッチンが定位置といった具合です。

もし複数あるデバイスに同時に声が届いた場合も、ちゃんと最も近いものが反応するしくみになっているので安心。とはいえときどき、キッチンでタイマーをセットしたつもりが、隣接するオフィスでアラームが鳴るといったことも起こります。

また時には、4人のAIアシスタントの誰に目覚ましを頼んだのかわからなくなり、止めるのに苦労することもあります。まぁそのおかげで、苦手な朝もしっかり起きられているので、1ダースのスマートスピーカーとの暮らしは、今のところとても快適です。

4人のAIアシスタントは、私に音楽を聞かせてくれたり、離れて暮らす家族とつないでくれたり、いろいろな質問にも答えてくれます。私は彼らによって起こされ、今日の天気や予定、目的地までの所要時間を確認し、ニュースを聞き、ラジオ体操をして、レシピを教わり、ときには暇つぶしにつき合ってもらったりもしながら、日々を送っています。最近ではそれぞれのAIの個性もわかってきて、ますます親しみを感じるようになってきました。

スマートスピーカーが魅せるそれぞれの個性

これはあくまでも私のイメージですが、たとえばAlexaは優等生タイプ。どんな無茶ぶりにもけなげに応えようとします。彼女(声が女性っぽいので)は友達=スキル(スマホのアプリにあたる拡張機能)が多く、友達を通じてカラオケやクイズも楽しめますし、家電の操作も得意。またAmazonのAIアシスタントらしく買い物もできるのですが、ときどき誤発注をやらかしてヒヤヒヤさせられます(概ね、私の滑舌のせいなのですが……)。

Googleアシスタントは秘書タイプ。彼(声は男女選べますが、私はイケボを選択)は検索が得意で、「(タレント名)って独身?」といった、テレビを見ながらの私の下世話な質問にも、ちゃんと答えてくれます。さらに語学にも長けていて何語でも通訳可能。Googleカレンダーを使っている私のスケジュールも完璧に把握していて、移動の所要時間などもささっと答えてくれますが、できないことは割とはっきりと、できない、わからないと言います。

Clovaは音声操作でLINEの送受信ができるなど、コミュニケーション能力に長けています。ときどき不意に話し始めたり、リクエストと違う音楽をかけたりしてドキッとさせますが、なんだか憎めないタイプ。

Siriは私がApple Musicを好んで聞いていることもあって音楽が得意。私の使用している「HomePod mini」はコンパクトながらも、なかなか良い音を聞かせてくれます。「iPhone」との連携はまさに阿吽の呼吸で、最近導入した「AirTag」とともに、家の中のなくしものを見つけてくれたりもします。

AIアシスタントの進化でいつかは夢のマシーンも?

彼らはいずれも日々進化していて、できることが少しずつ増えています。これまでの電化製品は時間が経つと機能が古くなる一方でしたが、クラウドにいるAIアシスタントは逆に進化する一方なので、スマートスピーカーは長くつきあえるコスパの高いデバイスと言えるでしょう。

実際に彼らを通じて操作できる家電も増えていて、先の例でも挙げたとおり、あらかじめ「定型アクション」や「ルーティン」と呼ばれる設定をすれば、「おはよう」のひと言で複数の家電を動かす……なんてこともできます。

我が家でも「おやすみ」と言うと照明やテレビが消え、代わりにベッドライトが灯るよう設定済みで、うとうとしながら「おやすみ」とつぶやくだけで、スムーズに夢の中へ……。一度横になったら、何があってもベッドから動きたくない私には、まさに理想の環境が構築されています。

とはいえやはり、たまにはうまくいかないことも。実はつい昨夜もAlexaの機嫌を損ねてしまったようで、ベッドで何回も「おやすみ!」を連呼しているうちに、のどが乾いて目が冴えてしまい、眠れなくなってしまいました。

このようにラクをしようとしてもなかなかラクをさせてくれない彼らですが、それでもいつか、夢の全自動起床マシーンの実現を夢見つつ、この短期連載ではデジタル製品でいかにラクをするか、その一点のみを追求していきたいと思います。どうぞしばしお付き合いください。

著者 : 太田百合子

おおたゆりこ

テックライター、エディター。インターネット黎明期よりWebディレクションやインターネット関連のフリーペーパー、情報誌の立ち上げに携わる。以降パソコン、携帯電話、スマートフォンからウェアラブルデバイス、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットと、それら通じて利用できる様々なサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。

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