Amazon Go対抗の最有力 トライアルHDが共創基盤を福岡に集約 打倒アマゾンの戦い方

Amazon Go対抗の最有力 トライアルHDが共創基盤を福岡に集約 打倒アマゾンの戦い方

タブレットを搭載した「スマートショッピングカート」や「AI(人工知能)カメラ」「デジタルサイネージ」を駆使してリアル小売店のスマートストア化を推し進める、九州に本拠を置くディスカウントストアのトライアルホールディングス(トライアルHD、福岡市)。米アマゾン・ドット・コムが米国で手がけるスマートストア「Amazon Go(アマゾンゴ-)」などにも対抗しようというその戦略のポイントは、「1社だけでイノベーションは無理。業界まとまって革新を進める」というもの。その実態を象徴する取り組みを追った。

「リモートワークタウン ムスブ宮若」プロジェクトの一環として開催された「第1回宮若国際芸術トリエンナーレ」の開催を示すテープカット。トライアルIoTラボ(旧宮田西中学校体育館)で、右から宮若市市長の有吉哲信氏、トライアルHD社長の亀田晃一氏、九州大学総長の石橋達朗氏、宮若市議会議長の遠藤嘉昭氏[画像のクリックで拡大表示]

 2021年7月29日午前9時30分、福岡市と北九州市のちょうど中間あたりに位置し、博多駅から電車とバスを乗り継いで1時間45分ほどかかる宮若市の旧宮田西中学校で、「リモートワークタウン ムスブ宮若」プロジェクトの記者発表会が開催された。

 リモートワークタウン ムスブ宮若とは、トライアルHDと宮若市が20年に連携協定を締結し、協働して推進する地方創生・まちづくり構想だ。トライアルHDはこれまで、九州や関東エリアに、タブレット搭載のスマートショッピングカートやAIカメラ、店内に設置した大型デジタルサイネージなどを備えたスマートストアをいち早く展開。店で得られたユーザーの過去の購買履歴や商品ごとの売り上げデータなどを分析して、店頭でさまざまなマーケティングの取り組みを実施してきた。アマゾンゴーなどに目を奪われがちな小売りのデジタル化・データ化に関して、日本における先駆者の1社といえる(参考記事:「レコメンドの好機は? サントリー、トライアルがたどり着いた解」)。

 そのトライアルHDと宮若市の2者に加えて、九州大学などの研究機関やトライアルと提携するメーカー、卸なども加わり、宮若市を「リテールDX(デジタルトランスフォーメーション)の拠点=リテールテックのまち」として活性化させることを目指す。

 まず宮若市内にある廃校になった複数の小中学校跡地を、トライアルはもちろん、メーカーや卸、研究機関のエンジニアなどが集う研究拠点として整備。集まってきたエンジニアが住む住居棟も21年から22年にかけて併設し、豊かな自然と職住近接という環境を整え、研究・開発(R&D)の効率化を図る。当面は、福岡市にあるトライアルHD本社や同社東京オフィスで働いていたエンジニアのうち50~60人が移ってくる予定だ。

Amazon Go対抗の最有力 トライアルHDが共創基盤を福岡に集約 打倒アマゾンの戦い方

<前回(第6回)はこちら>

【特集】打倒アマゾンの戦い方【第1回】 アマゾンの猛攻に耐え抜いた、生き残り企業「3つの共通点」【第2回】 リーバイスとコメ兵の局地戦 中古の循環経済でアマゾンを排除【第3回】 新鮮な地元野菜をどう届ける? クックパッドが出した答え【第4回】 「アマゾンにも真似できない」 定期便を究めた菓子サブスク【第5回】 アマゾンから購入直前の顧客を横取り 大手銀が奇策を投入【第6回】 “アマゾンキラー”のショッピファイ、驚異の成長率の訳【第7回】 Amazon Go対抗の最有力 トライアルHDが共創基盤を福岡に集約←今回はココ

廃校を再生した研究拠点に芸術作品を展示

 具体的には、旧吉川小学校を再整備して、トライアルのITエンジニアとメーカー、卸のAIエンジニアなどが共同でリテールAIの開発を進める施設「MUSUBU AI(ムスブAI)」を21年6月に開設した。トライアルグループやメーカー、卸のエンジニア、それに大学の研究者などが共創を進めていく「場」としていく考えだ。名前は非公開だが既に複数のメーカーとの間で、ムスブAIにエンジニアを派遣してもらう方向で調整が進んでいるという。

 次いで旧宮田西中学校を整備して、スマートショッピングカートやAIカメラ、デジタルサイネージといったデバイスやソフトウエアをトライアル自らが開発するセンター「TRIAL IoT Lab(トライアルIoTラボ)」を開設、発表会当日から本格的に稼働が始まった。こちらはスタート時はトライアルグループの研究拠点という位置づけだが、「今後の進展によっては、メーカーや卸、大学などとの共創の場としても活用していく」(トライアルHD会長秘書室室長の矢野博幸氏)という。

MUSUBU AIの外観。旧吉川小学校の校舎をPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)の手法で宮若市から借り受け、ほぼそのまま利用する形で再生させた。体育館は地元農家の食材を利用したレストランに生まれ変わる計画[画像のクリックで拡大表示]TRIAL IoT Labの外観。旧宮田西中学校の跡地をトライアルHDが買い取り、校舎をほぼそのまま生かして再生させた[画像のクリックで拡大表示]

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