「ポータブルWi-Fi」レビュー
25/03/2022
(写真:ファミ通.com)
文:カイゼルちくわ KONAMIから2022年2月10日(木)からNintendo Switchで、2月17日(木)からはアーリーアクセス期間を終えてSteamで配信開始の、ローグヴァニア2Dアクションゲーム最新作『GetsuFumaDen: Undying Moon(ゲツフウマデン アンダイング ムーン)』。【記事の画像(37枚)】を見る 1987年に発売されたファミコン向けアクションゲーム『月風魔伝』と世界観を同じくする、35年ぶりのシリーズ最新作となる本作。筆者はSteam版のアーリーアクセス開始初期に、こちらのタイトルをプレイしてレビューを書かせていただいた。これが34年ぶりの新作『月風魔伝』だ! やめどきを失う地獄の周回『GetsuFumaDen: Undying Moon』先行プレイレビューhttps://www.famitsu.com/news/202105/14220247.html アーリーアクセス初期にプレイしたときには、原典からは大きくゲーム性を変えつつも世界観を見事に踏襲し、さらに原典にあった“ひりつき”もしっかりと受け継いだ、かなり歯ごたえのあるタイトルという印象を受けた。 ただ正直なところ、難度が高めで周回するにはかなり集中力を持っていかれるとともに、周回ごとに手に入る素材の量が少なく、そのためキャラクターの育成や、装備の解放と強化が停滞した。なかなかさきに進めない、もどかしさも強く感じていたわけだ。 しかし本作はアーリーアクセス期間に何度もアップデートを重ね、そうしたもどかしさを軽減してきた。難しさを保ちつつも爽快感や、強化の実感を感じやすいように、絶妙なバランスを生み出してくれたのだ。 今回はそうしたアップデートでよりおもしろくなった本作の魅力を、Nintendo Switch版をプレイしてみて実感したアーリーアクセス版との違いにも触れつつお伝えしていく。地獄絵めいた独創的な世界を駆ける 本作の舞台となる世界は、『月風魔伝』で地獄界の魔王・龍骨鬼を初代“風魔”が倒し、その一族・月氏が第二七代目“月風魔”を当主とする時代だ。月風魔は現世に噴出し始めた地獄の異変を探るべく、その奥底へと向かっていく。 その道中の風景は、まさに地獄。日本画でいうところの“地獄絵”をそのまま立体化したかのようなグラフィックは恐ろしくも美麗だ。加えてゲーム的な視点からいうと、はっきりした縁取りと色使いのため、敵や敵弾の視認性も非常にいい。Switch本体の画面でも、Steam版と差異なくプレイできた。 道中に登場する敵や各ステージの最後に待ち受けるボスは、すべて日本の妖怪絵巻に描かれた姿そのままで動き出したような魑魅魍魎(ちみもうりょう)だ。とくにボスはいずれも画面全体に及ぶほどに巨大で、日本画風のタッチによる独特の迫力をもって襲いかかってくる。 こうした独自のグラフィックと、おどろおどろしくも勇壮なBGMに彩られた道中のルールは非常にシンプルだ。ランダムで地形や敵の配置が決定するステージに足を踏み入れ、どこかにあるボスのところへ通じる鳥居(とりい)を探し、そのさきでボスを撃破。そこでつぎのステージに進むか、スタート地点に帰るかを選ぶ。このくり返しだ。 本作では主人公の体力が尽きるとその場でゲームオーバーとなり、道中に獲得していた素材やお金と言った取得物は失われてしまう。自主的に帰れば素材をすべて持ち帰れるが、さきに進めばよりいい素材が手に入ることになる。いわゆるローグヴァニアゲームの基本を踏襲した形だ。 全ステージのクリアーを目指しつつも、いつ、どこで帰還するかも慎重に考えなくてはならない。ステージが進むたびに難度は格段に高くなっていくこともあり、ここで悩むのも本作のおもしろさのひとつだ。 キャラクターの操作については、最初から二段ジャンプと、無敵時間があり敵をすり抜けられる前転回避が使用できるほかには、敵を怯ませやすい空中からの急降下攻撃があるくらいで、ほかに特殊なアクションはほとんどないため、非常に分かりやすい。 攻撃は“主武器”と“副装備”で行なう。主武器と副装備はともに道中の宝箱から入手でき、敵を倒した際にも確率でドロップする。それぞれふたつずつ持ち歩くことができ、主武器はボタンで切り替えて使い分け、副装備はそれぞれ対応したボタンを押せば即座に使用できる。 本作には各ステージの制限時間や、時間経過で難度が上がるといった要素はない。そのため各ステージでは、宝箱を探しつつ、素材や装備のドロップを狙って敵をすべて倒していくのが定石になる。 だが、本作ではボスではない道中の敵もなかなかに手ごわく、不意打ちでの突進や飛び道具など、さまざまな攻撃手段でこちらの体力を削ってくる。体力を回復できる“回復薬”はそんなに入手できるものではないので、ときには交戦を避けてボス戦に進む判断も必要になるだろう。こうした判断にも、プレイヤーの手腕が問われる。 ほかにもステージをくまなく探索したい理由として、“魂の記憶”と“魂”を集めて主人公を強化したいという点もある。“魂の記憶”は装備を強化するための重要かつ貴重な素材で、これをより多く集めて装備を強化することで、より速く敵を倒して反撃を抑えることができる。 とくに装備の段位は、攻撃力が大きく変わるので装備のなかでも最重要だ。なお、段位は元の段位から重ねて強化していくごとに必要な魂の記憶の量が増えていく。 たとえば段位1の装備を段位5に持っていくには20個近くもの魂の記憶が必要になるが、段位4の武器を段位5にするなら魂の記憶はふたつで済む。元の段位が高い装備は、強化の効率面からしても重要なわけだ。 もうひとつの強化要素である、大きな宝箱や赤いオーラを放つ強敵から獲得できる“魂”の使いかたも、攻略難度に大きく関わってくる。魂を獲得するたびに、画面下にあるゲージがひとつ右へと進んでいき、好きな強化内容の位置でボタンを押すことでその強化内容を一段階得られる。 ゲージがいちばん右からさらに移動した場合は、“魂の記憶”をひとつ獲得する。だが、生命力の強化や攻撃力の強化に加え、回復薬を即座にひとつ獲得するという欄もあるため、この手段で魂の記憶を得るよりはなんらかの強化に使いたいところだ。 これらの装備や主人公自身の強化は、当然ながらスタート地点に戻るとリセットされてしまう。だが、そこでリセットされず永続的に効果がある強化要素も本作にはある。 “鍛練”では生命力などの主人公の能力を強化でき、“秘伝”では回復薬の最大所持数の増加や、死亡しても一部の素材を持ち帰るなどといった特殊能力の獲得が可能だ。これらの強化に必要な素材もまた敵や宝箱からドロップしたものを持ち帰らないといけないため、主人公の地力を上げるためにも、進むか戻るかの慎重な判断が必要になるというわけだ。 このように本作は分かりやすいアクションゲームという面と、つねに判断を求められる悩ましい戦略面を併せ持ち、ローグヴァニアアクションとしての完成度が高い。 道中の敵の手ごわさなどから来る難度の高さも合わさると、アクション操作には頭を使わずとも判断のためにつねに頭をフル回転させる、その忙しさと緊張感がクセになるタイトルだ。ストイックさを保ちつつ、爽快感がアップ! ここまではアーリーアクセス版と共通の部分の紹介をしてきたが、おそらくほとんどの読者諸兄には「かなり難しくてストイックなゲームなんだな」と感じられたかと思う。実際、アーリーアクセス初期版では記事冒頭に書いたとおり、何度も高難度のステージをクリアーしても素材がぜんぜん足りず、無表情で何時間も周回していたこともあった。 だが、アップデートでは必要素材量が緩和されたのを皮切りに、さまざまな改良が加わっている。そのなかでもとくに本作のおもしろさに直結するものを、一部紹介しよう。難易度“修練者”の追加 こちらの難易度はいわゆるイージーモードにあたる。修練者モードでは道中に手に入るお金の量が大きく増え、さらに道中に出現する敵の数が減り、鬼などの手ごわい敵がそもそも出現しなくなるなど、体力減少の要因が格段に減る。 その分、敵から得られる素材の種類や数は限られてしまうものの、お金の増加はそれを補って余りある。金色の鳥居のショップで、別モードではなかなか手が届かなかったレア素材セットを購入することも容易になる。 さらに最終ステージに到達するまでのステージ数も減るため、まずゲームクリアーを目指すならこのモードがオススメだ。鍛練や秘伝のための素材集めも、道中がさくさく進められるので非常にはかどる。装備の解体が可能になった 個人的にもっともありがたかったアップデートがこちら。道中でドロップした装備が必要ない場合、その場で解体して素材に変えることができる。 その装備がある程度強化された状態のものなら、素材といっしょに魂の記憶も獲得できる。このおかげでアップデート前よりも格段に魂の記憶が手に入りやすくなり、装備の強化が気軽にできるようになった。 装備を強化しやすくなり、高い攻撃力が得られたことで、道中の敵のせん滅速度はもちろん、ボス戦ではボスの部位を破壊することで生じる怯みを誘発しやすくなった。そのため、ダメージを受けず連続して攻撃を当て続けると発生するパワーアップ状態“鬼人化”の発生と維持もしやすくなっている。 敵をスムーズになぎ倒し、攻撃パターンを把握したボスを鬼人化でねじ伏せるこの爽快感は、全体的な難度が高い本作ではひときわ気持ちよく感じられる。乱入戦と新キャラ“月蓮華”の追加 “修練者”以外の難度でプレイしているときに、つぎのステージへと進む鳥居をくぐった際に一定確率でノイズが走り、乱入戦のステージに転送される。そこに出現する、操られた状態の第二一代当主“月蓮華”に勝利すると、つぎのスタート地点への帰還時から、プレイアブルキャラクターとして月蓮華が使用可能になる。 月蓮華とのキャラクターチェンジはスタート地点の拠点で行なう。月蓮華は月風魔と比べて移動速度が速いが、攻撃力と生命力が格段に低い。また、秘伝や装備の開放状態については月風魔と共有になるが、鍛練については強化用素材も含めて月風魔とは共有しないため、月蓮華でプレイして素材を集め、いちから強化していく必要がある。 装備を強化した際の攻撃力の上昇値も月風魔と比べてかなり低くなるため、敵を倒すために必要な手数は増えるが、移動速度の増加により探索がスムーズになるのは大きな利点だ。くノ一という点でも惹かれるキャラクターなので、ついつい育成したくなる魅力がある。 筆者がとくに影響が大きく、ゲームのおもしろさに直結していると感じたアップデートは以上の3つだ。ほかにも各ステージにひとつ配置されている石碑から回復薬が確定でひとつ出現するようになるなど、プレイヤーが本作でストレスとして感じやすかった“道中に体力がどんどん削られていく圧迫感”について、いろいろな面からゲームがスムーズに進められるようになったことで軽減されている。 とはいえ、難度が下がったのかといえばそういうわけでもない。道中の手ごわさはちゃんと緩和されず残っており、ノーマルモードにあたる難易度“凡人”と、そのうえの難易度となる“強者”や“熟練者”では、ひりつく緊張感がしっかり味わえる。“修練者”の追加で遊びかたの幅が増え、より自分の腕前や気分に合わせたプレイができるようになったのがうれしい。ローグヴァニア入門にもオススメの完成度 アーリーアクセス版の段階では、システムなどは分かりやすいがかなり玄人向けに感じる仕様だった本作。だがアーリーアクセスを経てVer1.0となってからの本作は、アクションゲームが苦手な人でも分かりやすくプレイできるタイトルに進化した。 そう快感と少しずつさきへと進めている達成感が同時にはっきりと感じ取れるようにもなっており、筆者としてはローグヴァニアの面白さを知る入門用としてもちょうどいいタイトルになっていると感じた。 また、ローグヴァニアとしての奥深さもかなりのものと感じた。7種類の主武器と6種類の副装備を、どう選んで使い分けるかで道中の進めかたは大きく変わっていく。各装備に特定の種族に対するダメージボーナスや、状態異常の付与など、さまざまな特殊能力が用意されているのも選択の楽しさに拍車をかけている。 また、主武器にはそれぞれ固有の特殊攻撃が用意されており、たとえば“刀”なら敵の攻撃を弾いて隙を生み、戦傘なら広げた傘で敵の攻撃をガードすることができる。特殊攻撃の一部は空中で出すと性能が大きく変わるため、使いこなすとジャンプや前転回避以外にも、多彩なアクションがくり出せるようになる。 とはいえ、特殊攻撃を使わなくてもジャンプや前転回避だけでも十分に攻略は可能で、使いこなすことが必須とはなっていない。この辺のゲームバランスも、じつにちょうどいい。 長時間遊びつづけることになるローグヴァニアゲームにおいて、“分かりやすくて操作にストレスがない”という点と、“しっかり手ごわいけど気持ちよさもある”という点は、プレイヤー層を問わない大きな魅力と言える。独特の美しいビジュアルや、35年ぶりの『月風魔伝』である点などから本作がちょっと気になったという人には、アクションの得手不得手などは気にせずぜひ一度触ってみてほしい。GetsuFumaDen: Undying Moon(ゲツフウマデンアンダイングムーン)メーカー:KONAMI対応プラットフォーム:Nintendo Switch、Steam配信日:Nintendo Switch版/2022年2月10日、Steam版/2022年2月17日価格:Nintendo Switchデジタルデラックスエディション/3828円[税込]Nintendo Switch通常版/2728円[税込]Steamデジタルデラックスエディション/3828円[税込]Steam/2728円[税込]ジャンル:アクションCEROレーティング:17歳以上対象備考:ダウンロード専用