<ぱらぱらじっくり 教育に新聞を>ニュースパークで学ぶ(上) 確かな情報 見極めよう

<ぱらぱらじっくり 教育に新聞を>ニュースパークで学ぶ(上) 確かな情報 見極めよう

身の回りを飛び交う情報の量がインターネットの普及で爆発的に増加したことを光の輝きの量で示して可視化した情報タイムトンネル=横浜市のニュースパークで

 インターネットやスマホが普及(ふきゅう)したため、私たちのまわりを飛(と)び交(か)う情報(じょうほう)の量(りょう)が爆発(ばくはつ)的に増えた。誤(あやま)った情報と正(ただ)しい情報とを見分(みわ)けるのが難しくなった。そんな時代を生きる子どもたちに「確(たし)かな情報を見極(みきわ)める力」を身(み)につけてもらうための展示(てんじ)が、横浜(よこはま)市にあるニュースパーク(日本新聞博物館(しんぶんはくぶつかん))には用意されている。この秋、東京都豊島(としま)区立中学の一年生たちが学校ごとに相次(あいつ)いで同博物館を訪(おとず)れた。スマホ世代(せだい)は何を学んだのか。三回に分けて報告(ほうこく)する。 (東松充憲(とうまつみつのり))

◆激増 光の量で体感

 「人類史上(じんるいしじょう)、社会を飛び交う情報(じょうほう)が最(もっと)も多くなったのが今です。そういう時代に皆(みな)さんは生きているんです」 わき上がるように明るい光が流れ続ける壁面(へきめん)を示(しめ)しながら、ニュースパークのスタッフが生徒たちに解説(かいせつ)した。 「情報タイムトンネル」と命名(めいめい)された展示(てんじ)コーナー。人々の間でやりとりされる情報の量が、技術(ぎじゅつ)の進展(しんてん)とともにどう増えてきたのか−。それが壁面に映(うつ)る光の量で表現(ひょうげん)され、体感(たいかん)できる。 入り口の「紀元前(きげんぜん)」付近(ふきん)は薄暗(うすぐら)い。動物の皮や粘土板(ねんどばん)に文字(もじ)が記(しる)された大昔(おおむかし)は、情報量を示す光が弱々(よわよわ)しい。生徒たちがゆっくりトンネルを進む。紙や印刷(いんさつ)技術が発明されても、新聞などの印刷物が伝える情報量はそれほど多くはない。やがてテレビが登場(とうじょう)すると光は増加(ぞうか)。さらにインターネットやスマホが普及する時代に突入(とつにゅう)すると、壁面は急激(きゅうげき)に明るさを強めた。 「すごい違(ちが)い。壁(かべ)の年表にもあるとおり、アメリカで一九六九年にインターネットが誕生しました。そしてそれをだれもが利用できるようになっていったことで、世の中に流れる情報量が爆発的に増えたんです」とスタッフ。生徒たちは壁や床を流れる幻想(げんそう)的な光を見つめ、よく知っているYouTubeっぽい赤いマークを見つけると歓声(かんせい)を上げた。 「これだけ情報があれば、もちろん役に立つ情報や楽しい情報、正確(せいかく)な情報はいっぱい入っています。だけど中には、間違(まちが)っていたり、信じると危ない情報もあるはず」。生徒たちに自分の頭で考えさせようと、スタッフが問いかけた。「じゃ、どうやって自分が信じていい情報を選べばいいのでしょうか?」

◆大切な「四つのポイント」

 生徒たちが次に見学したのは、うわさ話(ばなし)が人々の不安によって増幅(ぞうふく)され、信用金庫(しんようきんこ)の取り付け騒ぎを招いた実例を学ぶ展示コーナー。その後、一部だけを切り取って伝える情報の怖さや、見る立場によって報道(ほうどう)内容が変化する事例を紹介する展示も見た。 新型コロナ禍(か)で起きたトイレットペーパー騒ぎでは、不足(ふそく)する心配がないはずなのに店頭から品物が消えた。「デマだから信じないように」との善意(ぜんい)の呼び掛けがSNSで拡散(かくさん)されると、その情報発信が逆に、念(ねん)のため購入してしまう人を増やしたとも言われている。 不安の連鎖(れんさ)につながる情報が拡散して社会が混乱し、制御(せいぎょ)困難になる状況(じょうきょう)を意味する「インフォデミック」という言葉が注目を集めた。 真偽(しんぎ)ないまぜの「情報爆発」の世の中で正しい情報を見抜くのは大人にも難しい。 「皆さんが情報を見極(みきわ)めるためのポイントは四つあると思います」。スタッフがパネルを示しながら説いた。 「一つ目は、情報を受け取ったらまず立ち止まって考えてみるようにしましょう。二つ目は、その情報源(げん)が何なのか、単なるうわさ話なのか新聞やテレビが報(ほう)じた話なのかを確かめること。三つめはその情報だけに頼らずほかの情報がないか探して比べる。そうすると判断(はんだん)できるよね。そして四つめ。自分が情報を発信するときは慎重(しんちょう)に。これもとても大切なんです」 情報源としての新聞の信頼度については「新聞社が何をやっているのか、この博物館の展示でぜひ調べてみて。チームワークで正確な情報を報道できるようさまざまに工夫しています。情報を見比べるとき、役に立つクオリティー(品質)です」と強調した。

◆ネット社会 踏まえ展示

 ニュースパーク(日本新聞博物館(にほんしんぶんはくぶつかん))は、「日刊(にっかん)新聞発祥(はっしょう)の地(ち)」である横浜市(よこはまし)に2000年に開館(かいかん)した。「確(たし)かな情報(じょうほう)を見極(みきわ)める力の大切さ」や「民主主義社会(みんしゅしゅぎしゃかい)のため新聞が果(は)たす役割(やくわり)」について、わかりやすく展示(てんじ)している。小中学生は無料で見学できる。 運営(うんえい)するのは新聞各社(かくしゃ)が加盟(かめい)する日本新聞協会。インターネットの急速な普及により社会でやりとりされる情報量が爆発的に増えた。こうした環境変化を踏まえた展示とするため2016年にリニューアル。情報タイムトンネルのコーナーなどが新設された。玉石混交(ぎょくせきこんこう)の情報社会での生き方や身の守り方をスマホ世代が考えることができる貴重な学習施設となっている。 月曜休館。入館料は一般400円、大学生300円、高校生200円。(電)045(661)2040◇ 次回十六日の「ぱらぱらじっくり」では、戦争中に新聞が確かな情報を伝えられなかった歴史を生徒たちが学んだ様子をお伝えします。

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