「Yoga Tab 13」が提案するタブレットの新しい役割

「Yoga Tab 13」が提案するタブレットの新しい役割

13型のAndroidタブレット「Yoga Tab 13」とThinkPad。Twitterのニュースアカウントをずっと表示する使い方が役立っている

16:10のサブディスプレイにもなる

Yoga Tab 13は、Qualcomm Snapdragon 870を搭載した13型タブレットだ。IPSパネルの解像度は2,160×1,350ドットで縦横比は16:10となる。メモリは8GB、ストレージは128GBで特に不安を感じることがない不満のないスペックだ。なおSIMが装着できるモバイルネットワーク対応モデルは用意されていない。

興味深いのはHDMI入力ポートを持つところだ。つまり、他のデバイスのモニターとして使うことができる。今、市場にあるモバイルモニターのほとんどすべては縦横比が16:9のものなので、16:10のモニターになるこの製品は貴重だ。また、別にモニターがあるなら、Type-Cのオルトモードで映像を出力することもできる。これでオルトモードでの入力もできれば最高なのだが、それができないのが残念だ。

JBLスピーカーを搭載し、ドルビー・アトモスによるリッチなサウンドなど、エンタテイメントからオンライン会議まで、幅広く楽しめる。とはいえ迫力ある重低音といったものを期待するには装備を考えると無理がある。

AndroidのバージョンはAndroid 11で現時点では最新だ。Androidタブレット製品のOSは周回遅れになっていて、スマホと併用するときに、その使い勝手に差があるのが気になっていたが、これならいい。そのあたり、かなり古いモデルであってもiPad OSとiOSで整合性がとれるiPadとの違いを感じる。

立ててよし、かけてよしのキックスタンド

そんなわけで、久しぶりにタブレットを使ってみたわけだが、やはりキックスタンドが装備されていて、カバーなどを使わなくてもいつでも自立させられるのがいい。好きな角度で据え置くことができる。

板状ではなくワイヤーフレーム上のスタンドで、スタンドを上にしてぶら下げるような使い方もできる。無操作時の画面消灯するまでの時間には「起動しない」という項目も用意されているので、ずっと画面をつけっぱなしでスマートディスプレイ的な利用にも不便がない。

このキックスタンドの構造上の使い勝手もあって、基本的に、この製品はランドスケープで使うことを想定しているようだ。縦横比は16:10なのでポートレートでも使いやすいはずなのだが、その場合はキックスタンドが役にたたない。そして本体重量約830グラムをずっと片手で支えて使うのはつらい。だから、キックスタンドを使って好みの角度で立てかけて使うのがいい。

それにポートレートで使うと電源供給のためのType-Cポートが上か下にくるので設置時の見た目もよくない。仮にスタンド等を使っても、画面下部のバッテリ収納部と思われる部分が邪魔をして縦方向での水平をとるのが困難だ。

ずっと充電しっぱなしで画面も点灯したままで、いろんな用途に使うとなると、心配になるのがバッテリーだ。そういう使い方はバッテリーには酷だ。だが、この製品にはバッテリー保護モードという機能が用意されている。

「Yoga Tab 13」が提案するタブレットの新しい役割

これをオンにしておくと、バッテリー残量が40~60%の間で維持されるようになる。この容量は、バッテリーにはもっとも優しいとされている。バッテリーがすっからかんになるわけでもなく、満充電を維持するわけでもないいたわりながらの給電ができる。

ハイエンドで価格的にも決して安くはない製品だ。バッテリーの劣化だけで本体を使えなくなってしまうことを心配しなくてもいいというのは精神衛生上とてもいい。

PC作業の邪魔になるものをYoga Tab 13で表示

個人的にはニュースアカウントだけを集めたTwitterのリストを愛用している。このリストをずっと表示させておくと、一般的な世の中の話題が常時スクロールして表示されるので重宝だ。パソコンのデスクトップではTweetDeckを使うことでそれができているが、ラッシュのときには目で追えないくらいの速さだ。

ただ、Android端末ではTweetDeckを使うことができない。だが、「Marindeck for Tweetdeck」というAndroidアプリを見つけた。このアプリを使えばTweetDeck画面の自動更新スクロールがAndroidタブレットでもできるようになる。

こうなると画面を縦に使いたくなる。横いっぱいにひとつのリストだと表示が冗長なのだ。だが、ふたつのリストを用意して並べて表示すれば悪くない。

四六時中、映画やミュージックビデオを流しておくというのもいいが、やはりTwitterのタイムラインが自動的に流れていくというのはタブレットならではの使い方だ。スマートディスプレイではこうはいかない。

今様のタブレットは、インタラクティブに使うよりも、放置した画面が環境としてどんな働き方をしてくれるかという使い方を探してみるのがよさそうだということに気がつく。これはパソコンやChromebookではできない使い方だ。メール画面でもいいし、スケジュール画面でもいい。

本当は表示させっぱなしでいたいけれど、他の作業に邪魔になるというものをタブレット側に委ねることができる。いわば気づきの拡張だ。

もちろん、13型という比較的大きな画面の横置きは、ノートパソコン的な使い方にもいい。オンラインミーティングなどにも悪くない。外付けのキーボードをBluetoothなどで接続するのもいいだろう。パソコンがあってもその画面をオンラインミーティングアプリに占有されてしまっては困ることも多い。だから、ミーティングはタブレットにまかせて他のことはパソコンでする。

場合によっては両機で同じ会議にサインインする。それで収拾がつかなければパソコンの映像出力をタブレットにつないでマルチディスプレイ化する。そんなバリエーションに富んだ使い方にもこの製品は役立つだろう。

黙ったままで情報だけが流れる便利さ

ただ、ここで気になることもある。Androidアプリの多くがタブレットの大画面に最適化しようとする工夫ができていないのだ。横長フルスクリーンで使うには冗長すぎる表示となるものも多い。縦位置でしか表示できないものもある。でも、画面分割機能を使って縦長Androidが2つ並んでいると思えば腹もたたない。2つのAndroidアプリを表示させて使うのがよさそうだ。

また、この製品には縦位置表示のAndroidアプリを横長画面での縦表示にする機能もあり、柔軟な運用ができる。こんな小さな画面で分割できてもうれしくないだろうなという先入観があったのだが、縦画面で使うのが難しいなら、こういう使い方もありだと思う。

スマホは気づきを音や振動でプッシュする。その補助としてスマートウォッチなども使われている。だが、あまりにも多くの気づきがあると、そのすべてが音や振動で通知されてもわずらわしいだけだ。だからこそ、常時点灯し、黙ったままで情報が流れる個人用のスマートディスプレイが役にたつ。

大きなスマホとして認識されていたタブレットだが、このYoga Tab 13は、ちょっとした時代の流れの中で、その役割を変えて新たな提案をしようとしているように思う。そのためにもタブレットとしては大型の部類に入る13型でなければならなかったという必然性がある。きっとそれより大きくてもだめだし、小さくてもだめだったのだろう。

著者 : 山田祥平

やまだしょうへい

パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life

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