「ポータブルWi-Fi」レビュー
25/03/2022
ポータブルWi-Fi |
3GやWiMAXなどのモバイル回線を、無線LANで周囲の機器と共有する「モバイルルーター」。これらのデバイスは、比較的新しいジャンルの製品だが、昨年11月にイー・モバイルから発売された「Pocket WiFi」などにより、認知度は高まりつつある。今年に入ってからは製品数も増え、そろそろモバイルルーターが欲しいかな、と思っている人も多いのではないだろうか。
そして今夏、ドコモの3Gネットワークが使えるモバイルルータ「ポータブルWi-Fi」が登場した。評価の高いドコモの3Gネットワークが使える、注目の製品だ。今回はこのポータブルWi-Fiを借りることができたので、数日試用した上でのレビューをお届けする。
ルーター売り場に並んでいても違和感がないパッケージ |
付属のUSBケーブル分岐タイプ |
ポータブルWi-Fiは、NTTB(NTT Broadband Platform)とバッファローの共同開発となっている。バッファローといえば、さまざまなパソコン周辺機器で歴史も知名度もあり、無線LANルーターでもシェアの高いメーカーだ。しかし実は、バッテリーで動くモバイルデバイスはあまり手掛けていない。
製品を手に取る前にまず目に付くのは、バッファロー特有の赤いパッケージだ。表面には商品写真がプリントされ、側面や裏面には製品の特徴や仕様が記載されている。当たり前ではあるが、どこからどう見てもバッファロー製の無線LANルーターであり、キャリアの製品としてデザインされる普通の携帯電話のパッケージとは全く違うのが面白い。なお、パッケージなどにはバッファローの無線LAN製品のブランド名である「AirStation」は使われていない(本体内の設定ページなどにAirStationの名前は使われている)。
マニュアルもバッファロー流儀で、A6版で100ページ超の「取扱説明書」、A6にまで折りたたまれたA2版1枚の「接続ガイド」の2つが同梱されている。初期設定状態で接続するならば、「接続ガイド」だけ読めば良いようになっている。そのほかの同梱品は、充電用ACアダプタとケーブル、クレイドル、パソコンとの接続に使うUSBケーブル、そしてLANケーブルなどとなっている。
iPhoneや普通のケータイとの大きさ比較 |
本体のサイズは95×64.4×17.4mmで、重さは105g。最近のケータイよりも軽いくらい。サイズは、衣類のポケットに入れるにはちょっと幅広な印象だが、カバンに入れるにはちょうど良い。
本体に付いているスイッチ類は、電源ボタンとAOSSボタンだけだ。いずれのボタンもちょっと凹んだように配置され、しかも3秒の長押しで動作するので、カバンの中に放り込んでも誤動作しにくくなっている。
インジケータ類は「WIRELESS」と「BATTERY」、「AOSS/DIAG」の3つのLEDのみ。それぞれ色や点滅でWAN接続や電池、セキュリティキー交換設定と機器異常などを示すようになっている。わかりやすくはないが、必要な点灯パターンだけ覚えてしまえばどうということはない。
端子類は、充電用のミニUSBコネクタとクレイドルとの接続用コネクタの2つのみ。あとはバッテリカバーを外すと、microSDカードスロットとSIMカードスロット、デフォルトの暗号キーが記載されたラベルがある。クレイドル端子とメモリカード対応は、モバイルルーターとしてはユニークなポイントだ。ちなみにバッテリの容量は3.7Vの1880mAh。100gクラスの機器としては大きめの印象だ。側面にはストラップホールもある。
上面にスイッチがある | 下面には端子類 |
バッテリカバーを開けたところ | ストラップホール |
各種設定を行うページ。ここに入らないでも接続は可能 |
デフォルトではmoperaの定額APが設定されていた |
今回、お借りした製品は、最初からmopera Uの設定がなされていた。ドコモショップ店頭で聞いた話だと、購入と同時に契約すれば、最初からmopera Uは設定済みとのこと。そうなると、あとはパソコンやポータブルゲーム機などのデバイスを、無線LANで繋げば良い。まったく簡単だ。
無線LANの繋ぎ方も難しいものではなく、付属の「接続ガイド」に記載されていることだけで済む。「接続ガイド」には、iPod touchとニンテンドーDS、PSPとの接続方法が案内されている。ニンテンドーDSとPSPでは「AOSS」によるワンタッチ設定を、iPod touchではバッテリーカバー内のラベルに記載されているデフォルト設定のSSIDと暗号キーを利用するように案内している。もちろんSSIDと暗号キーを使う方法は、iPod touch以外のデバイスでも利用可能だ。
Windowsパソコンからの使い方については、分厚い「取扱説明書」に、専用ユーティリティソフトを使っての接続方法が記載されている。ユーティリティソフトはポータブルWi-Fiに内蔵されていて、USB接続するとインストールするようになっている。ユーティリティソフトをインストールするのが面倒ならば、iPod touchと同じようにSSIDと暗号キーを使っても良い。
ちなみにMac OS Xでの使い方については、オンラインマニュアルの「リファレンスガイド」に記載されているが、こちらはiPod touchと同じ暗号キー手入力の手順になっている。ほかのスマートフォンについても、iPod touchと同じ手順で十分だ。また、AOSSはSSIDと暗号キーを自動変更してしまうので、AOSS非対応デバイスを混在させる場合は、最初からいずれの機器でもAOSSを使わない方が楽かもしれない。
本体内の設定ページからは、無線LANルーターとして必要なことを一通り行えるが、ただ単にネットに接続するだけならば、そこをいじる必要はない。
パスワード保護された設定ページに入らないでも無線や電池状態を確認できる | DMZやポート変換など、ルーターに必要な機能は一通り搭載している |
WAN側、つまり3Gネットワークとしては、下り最大7.2Mbps、上り最大5.7MbpsのHSPAスペックのFOMAハイスピードに対応している。これは理論値で、実際の環境ではそこまでの速度は得られないが、しかしそれでも条件によってはかなりの速度が得られる。
たとえば渋谷駅周辺で日曜日の夜23時、RBB TODAYのスピードテストサービスを3回ほど試行したところ、平均値は下りが4.19Mbps、上りが1.55Mbpsとなった(Mac OS Xパソコンで測定)。
ただし速度はかなり不安定で、同じ場所、同じ時刻でも測定のたびに数値はかなり上下している。ましてや時間帯を変えると、もっと速度が変わる。3G無線部分の混雑の影響は大きそうだ。
また、「www.google.co.jp」にpingを100回ほど打ったところ、遅延は平均値111ms、最小56msで最大が475msだった。固定BB回線に比べると、遅延は大きいと言わざるをえない。ゲーマーの観点から言うと、低遅延が求められるFPSやRTSなどのゲームでは、ちょっと使いづらいかも知れない。
あとは、しばらく通信をしていないと、通信し始めだけ遅延が大きくなったり、あるいはタイムアウトエラーが発生する現象も見られた。これは後述するスタンバイ機能や省電力機能に関連するものと見られる。
バッテリーの持ちの良さは、ポータブルWi-Fiの特徴のひとつとなっている。カタログに記載されている、「連続使用で最大6時間」というのは、2010年8月現在、国内で販売されているモバイルルーター製品としては最長だ。
カタログには、「スタンバイ時で最大30時間」とも記載されている。このスタンバイ時の詳細は説明されていないが、ポータブルWi-Fiでは、一定時間、無線LANで通信がないと、自動でスタンバイモードに移行するようになっている(設定変更は可能)。スタンバイモードになっても、他デバイスから無線LANアクセスがあると、自動で通常モードに復帰するので、使い勝手が悪くなることはない。
今回、試用してみたところ、バッテリーを全部使い切るところまではいかなかったが、「バッテリーはかなり強い」との印象を受けた。
たとえばバッテリー残量100%の状態から、無線LAN接続を維持しつつ、不定期にWebを見ながらメールやTwitterの自動更新をしてみたところ、最初の40分ほど残量表示は100%のままだったが、1時間後に残量97%になり、そこからは1時間で15%くらいのペースで減るようになった(おそらくバッテリーが新品なため、満充電付近では残量計測が正確にできていないと思われる)。
ステータス確認ページはスマートフォンでも見やすく、モバイル環境で使いやすい |
このペースならば6時間は持ちそうだ。実際のモバイル利用シーンにおいては、子機となるデバイスのバッテリーも有限だし、なにより6時間もぶっ続けでネットを利用し続けることもなさそうなので、連続使用でポータブルWi-Fiのバッテリーを使い切るという場面は少ないと思われる。
そしてスタンバイモードに移行してしまうと、なかなか電池は減らない。ためしに一晩スタンバイモードで放置してみたが、20%も減らなかった。スタンバイモードのままならば、30時間以上持ちそうな勢いである。
基本的に外出中は電源を入れっぱなしにしていても良いのかも知れない。たとえば10時間スタンバイして電池を3分の1消費しても、4時間は連続使用できる計算となる。これだけ使えれば、日中の一般的な利用シーンはカバーできるだろう。
ただ、常時電源が入っていて無線LANにも自動アクセスするようなデバイス、たとえばスマートフォンが繋がっていると、スタンバイモードに移行できなくなる。そういったデバイスとの組み合わせには注意が必要そうだ。
ポータブルWi-Fiの3G機能は、ドコモがFOMAサービスで使っている800MHz帯と1.7GHz帯、2GHz帯の3つの帯域に対応している。要するに、通常のFOMA端末とほぼ同等のエリアで利用できる。これもポータブルWi-Fiの特徴と言えるだろう。
とくに屋内浸透性能の高い800MHz帯に対応しているので、ビルの中などでも電波が通じやすく、通信速度が落ちにくい。実際に試したところ、ほとんど速度が落ちることはなかった。はっきり言って、ドコモのネットワークは通じにくい場所を探す方が手間がかかる。また、今回は都市部でしか試用していないが、山間部などでの利用にも強いはずだ。そして場所よりも、時間帯や混雑度合いの影響が多い印象を受けた。
無線LANによるインターネット接続の設定 |
インターネットの接続には、3Gだけでなく、無線LANを使うこともできる。つまり、ポータブルWi-Fiが無線LANによる接続を中継する、というイメージだ。
たとえばポータブルWi-Fiに公衆無線LANを設定しておけば、子機となるデバイスは、ポータブルWi-Fi経由で公衆無線LANの回線を使える。公衆無線LANだけでなく、自宅の無線LANを設定しておいても良い。
また、無線LANのエリアに入ると、WAN回線を3Gから公衆無線LANに切り替えるという機能も持っている。自宅などでも、いちいち接続先を切り替えの必要がない、というのもひとつのメリットだ。
ただ正直に言って、使いどころが難しい機能ではあると思う。ポータブルWi-Fiがあいだに挟まることによるメリットよりも、電池などのデメリットの方が気になってしまう。
コンテンツの自動ダウンロード機能の設定画面 |
ダウンロード設定をONにすると、コンテンツ閲覧用のページが自動生成される |
ちょっと変わった機能としては、ポータブルWi-Fiには「自動ダウンロード機能」と「自動アップロード機能」が用意されている。
自動ダウンロード機能は、「ポータブルWi-Fi専用コンテンツ」「Podcast」「巡回サイトコンテンツ」について、一定間隔あるいは指定時刻にダウンロードし、microSDカードに保存するという機能だ。スタンバイ機能やクレイドルがあり、電源を入れっぱなしにしても運用しやすいこの製品ならではの機能である。
microSDカードに自動ダウンロードされたデータは、ポータブルWi-FiをUSBストレージとして読み書きすることもできるが、無線LAN経由で読むことも可能だ。その場合、ポータブルWi-Fiの設定ページのトップに追加される、自動ダウンロードコンテンツのボタンから視聴できる。パソコンだけでなく、ものによってはスマートフォンやポータブルゲーム機でも利用できるのが便利だ。
ポータブルWi-Fi専用コンテンツとしては、産経新聞系の動画ニュースなどが配信されていた。動画ニュースやPodcastは、iPhoneやPSPでも視聴が可能だった。iPhoneの場合、GoodReaderなどのアプリでダウンロードすれば、無線LAN接続を切っても視聴できる。
この機能、通信しにくい地下鉄車内などで使えるかもしれないが、もともとポータブルWi-Fiはエリアの広大なドコモの3Gネットワークに対応しているので、わざわざ自動ダウンロードせずとも、必要なコンテンツには自分でアクセスした方が手っ取り早くも感じてしまう。自宅の無線LANでダウンロード、という使い方を想定しているのだと思うが、ほとんどの人は定額制サービスを使い、たいていは天井金額に達するので、3Gの通信量を節約するメリットもない。
専用コンテンツの例。通常のWebサイトからもリンク1階層までを拾ってこられる | ダウンロードコンテンツ以外にも、カード内のファイルをブラウザから閲覧できる |
また、このmicroSDカード、電源オンの状態での抜き挿しはできない。データ破損を防ぐためだと思うが、ダウンロード・アップロードともにちょっと面倒になってしまい残念なポイントだ。
クレイドル背面。本体と同じ電源(ミニUSB)コネクタやLANポートがある |
ポータブルWi-Fiには専用のクレイドル(卓上ホルダ)が同梱されていて、本体下部の専用端子で繋がるようになっている。このクレイドル、充電するときにも便利なのだが、充電以外の、もっと高度なことにも使えるようになっている。
クレイドルには有線LANのポートも搭載されている。有線LANでポータブルWi-FiのWAN回線を使うこともできるが、逆に有線LANポートに固定BB回線を繋ぎ、固定BBルーターとして使うことも可能となっている。固定BBルーターとして使うときのために、クレイドルには有線LAN用のインジケータLEDも用意されている。
外出先ではドコモの3Gネットワークを使い、自宅では固定BB回線の無線LANルーターとして使う。ぶら下がるデバイスの無線LAN設定は、とくに変更する必要もない。家人と無線LANを共有しているとかだと、この機能にはあまり意味がないが、そうでないのならば、1台で外出中も自宅でも使えてしまうのがなかなか便利だ。
ちなみにこのポータブルWi-Fi、ほぼ同じ商品が、NTT東日本からも固定BB回線のフレッツ光契約者向けに、「光ポータブル」としてオプション提供されている。光ポータブルはドコモのSIMロック版と、イー・モバイルでも使えるSIMフリー版の2種類が用意され、それぞれフレッツ光の料金プラス315円でレンタルできるようになっている。
光ポータブル。機器自体のブランド名は「光LINK」の模様 | 設定ページの上部のロゴが変わっている。イー・モバイルの設定も最初から入っていた |
今回、光ポータブルについても、SIMフリー版をお借りすることができたので、ちょっと試してみたが、使い勝手そのほかはポータブルWi-Fiとまったく違いはない。見かけもロゴが違うくらいで、見た目も中身もほとんど違わない(設定ページのロゴがAirStationではなくNTTになっている)。ただSIMフリー版の場合、イー・モバイルの回線を使うことが可能になっている。そのため、通信速度やエリアも、ドコモのポータブルWi-Fiとは違ってくる。
光ポータブルにイー・モバイルのSIMを挿して、その速度を測定してみた。ポータブルWi-Fiと同時期に使うことができなかったので、ちょっと異なる時間帯、月曜日の朝11時に、RBB TODAYのスピードテストサービスで3回測定したところ、平均値は下り5.03Mbps、上りは1.12Mbpsとなった。ただし下り速度は最低で3.59Mbps、最大で6.46Mbpsと、かなり数値の上下が大きかった。
また、同じく月曜日の朝7時ごろに測定したときは、3回の測定結果がほぼ同じで、すべて下り8.0Mbps、上り1.3Mbpsという結果がでた。理論速度を超えているので、どうやらこの測定方法では微妙に下り速度が高く測定されると推測されるが、それでもほぼ理論速度が出ていそうだ。これは、ほかのユーザーの影響により、早朝など誰も回線を使っている人がいない時間帯は速い、ということだろう。
パッケージは、NTTの通信機器風の地味なデザイン(裏面には機能説明がある)だが、中の構造はポータブルWi-Fiと同じ |
NTT東日本が提供する光ポータブルは、月315円のレンタル料金のほかに、回線の料金が必要になる。設定ページ内には、通常の定額プランに加え、プリペイドプラン(EMチャージ)の設定も用意されている。本体価格と回線契約は別なので、期間拘束契約をすれば端末が安い、ということがないため、EMチャージも使いやすい。
ポータブルWi-Fiと中身は同じ光ポータブルが月額315円で使える、と思うと安くも感じられる。しかし筆者が8月9日にドコモショップで聞いたところ、ポータブルWi-Fiは定額データに2年期間拘束契約(スタンダード割)をつけると、本体価格が0円にできるとのことだった。ドコモSIMロック版を買うならば、ポータブルWi-Fiの方が安上がりになる可能性もあるので、レンタルを検討している人は、まずは販売店で確認しておくべきだろう。
クレイドルに載せれば自宅での無線LANルーターとしても使いやすい |
ポータブルWi-Fiの回線契約は、ドコモの提供するデータ通信専用の定額データプランを使うのが現実的なところだろう。
定額データに2年間の期間拘束のスタンダード割を使った場合、月額料金は最大で月額5985円となる。いちおう段階制の準定額だが、パソコンで使えばすぐに天井に到達するはずだ。さらに別途IPS料金が必要で、ドコモが提供するmopera UのU定額HIGH-SPEEDプランを使うなら、別途525円かかる。あわせて最大月額6510円。
ただし2010年9月30日までは、割引キャンペーンが実施されていて、契約日から1年間、月額1575円が割り引かれる。そうなると最大月額4935円となる。キャンペーン価格なら、他社のパソコン向け定額データ通信と大差はない。
しかし、「それほど頻繁には使わない」「1年後にはどうなるかわからない」というのであれば、2年縛りは不自由さを感じる。たとえば使用頻度が低いならば、イー・モバイルのプリペイド「EMチャージ」やWiMAXの1日契約も検討するべきだろう。
また、データ専用回線は、電話番号などを常に維持し続ける必要性が低いので、技術進化にあわせて柔軟に買い換え・乗り換えできると便利である。とくにドコモは今年からLTEの通信サービスを開始する。期間拘束による不便さは、音声回線とは少し違ってくるので、ちょっと考える必要があるだろう。
モバイルルーターは、ポータブルゲーム機やiPod touchなど、3GなどのWAN回線を外付けないし内蔵できない機器で利用するときに威力を発揮する。パソコンでしか使わないならば、USBタイプか内蔵タイプの方が、コンパクトかつ電源管理が不要で使いやすい。
ではモバイルルーター製品ジャンル内でポータブルWi-Fiをライバルと比較するとどうだろうか。
ポータブルWi-Fiは、モバイルルーター自体としても、使い勝手やバッテリの持ち、自動ダウンロード機能などの面で、なかなか充実している。そのあたりの性能からポータブルWi-Fiを選んでも良いが、しかしもっと重要なのは、エリアと料金、速度など、ネットワーク側の部分だろう。
ライバル機種のひとつ、WiMAX対応の「Aterm WM3300R」 |
ライバルとしては、イー・モバイル(PocketWiFiと光ポータブル)、WiMAX(WM3300RやURoad-7000など)、b-mobileこと日本通信(b-mobile WiFi)がある。
まず利用料金面では、b-mobileのU300プランが一番安い。しかもb-mobileはドコモのネットワークを使うので、カバーエリア面でもポータブルWi-Fiと同等となる。しかし速度が300kbps程度の制限されているので、パソコンで使うには少々不満を覚える。
通信速度では、10Mbps超えが当たり前のWiMAXがナンバーワンだ。価格面でも安く、期間拘束契約もない。しかしWiMAXはカバーエリア面は弱点で、郊外・山間部はもちろん、都市部でも建物の奥などは弱い。
イー・モバイルはバランスが取れている。エリアはドコモに及ばないが、WiMAXよりは良い。速度はドコモとほぼ同等。料金ではドコモより1000円ほど安い。
これらのライバルに比較すると、ポータブルWi-Fiの最大の特徴は、「広いカバーエリア」にあると言えるだろう。ドコモの3Gネットワークは、都市部の建物の中から郊外の山間部まで、日本国内ならほとんどの場所をカバーしている。思いつく限りのあらゆる場所で高速なネットを使いたい、というのであれば、ポータブルWi-Fiは最強のモバイルルーターだ。
もちろん、どのくらいのカバーエリアや速度、料金が適しているかは、利用者次第である。選ぶときは、まずは自分にとって何が適しているかを考えるべきだ。しかし、とにかく広いカバーエリアに対応したポータブルWi-Fiが登場し、モバイルルーターの選択肢に加わったことは、歓迎するべきことだろう。