あの人のスマートワークが知りたい! - 第33回 eスポーツのプロEvi選手に聞いた「リーグ・オブ・レジェンド」の魅力と楽しさ

あの人のスマートワークが知りたい! - 第33回 eスポーツのプロEvi選手に聞いた「リーグ・オブ・レジェンド」の魅力と楽しさ

eスポーツのプロ Evi選手に聞いた「リーグ・オブ・レジェンド」の魅力と楽しさ

2022.02.10 5182Twitter コミュニケーション YouTube eスポーツ TVゲームやPCゲームを使ってバーチャル空間で対戦するeスポーツ(Electronic Sports)。アジア大会や国体でも競技が行われ、高校の部活動にも採用されるなど注目が集まっている。こうした動きを牽引するのが世界で最もプレイ人口が多いとされるPCオンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」だ。世界各地に「リーグ・オブ・レジェンド」のプロリーグがあり、世界大会は過去11回開催された実績を持つ。昨年の日本の夏季リーグで優勝し、世界大会でも活躍したDetonatioN FocusMeのEvi選手に話を聞いた。文/豊岡昭彦

Evi(村瀬俊介)

世界中で1億人以上がプレイし、世界で最もプレイ人口が多いとされるPCオンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」のプロ選手。1995年、愛知県生まれ。一児の父。日本のプロリーグLeague of Legends Japan League(LJL)に加盟するDetonatioN FocusMe(デトネーション・フォーカスミー)所属。日本一のトップレーナーとして知られる。2014年にプロ選手となり、DetonatioN FocusMeには2017年から参加。YouTubeで「えびンモTV」を配信。登録者数4.7万人。DetonatioN FocusMeは、2021年のLJL夏季リーグで優勝し、世界大会のプレイインステージ(予選)でグループ1位となり、日本初のベスト16に進出した。DetonatioN FocusMe http://team-detonation.net/team/focusmeYouTube:えびンモTV https://www.youtube.com/channel/UCqWIpAZsfdtfh6qNDs1XQNATwitter:@ebihuryahurya https://twitter.com/ebihuryahurya

毎回新しい冒険ができる「リーグ・オブ・レジェンド」

――はじめに、Eviさんがプレイされている「リーグ・オブ・レジェンド」というゲームがどのようなものか、またその魅力はどんなところにあるか、ご説明いただけますか。

Evi 「リーグ・オブ・レジェンド」は、米国のRiot Gamesが開発したMOBA(Multiplayer online battle arena)と呼ばれるオンラインの対戦ゲームです。決まったフィールド(サモナーズリフト)の中で、1チーム5人で協力して相手チームと闘い、相手の本拠地のタワー(ネクサス)を破壊すれば勝ちになります。勝つためには個々の能力に加え、数的有利を作るためのチームワークや作戦、5人のコミュニケーションが重要です。

160種類以上のチャンピオン(キャラクター)が用意されており、各プレイヤーはその中から1体ずつ選択して使用します。チャンピオンは攻撃方法、攻撃力の強さ、有効射程、守備力、移動スピードなど、それぞれがまったく異なるため、組み合わせ方で攻撃方法や作戦も変わってきます。特定のチャンピオンを相手チームに使わせないようにすることもできるので、どのチャンピオンを選び、組み合わせるかというところから闘いは始まります。毎回、すべてのチャンピオンはレベル1から始まるので、どうやってレベルを上げるか、どのプレイヤーにレベルアップやゴールドを集中させるかなども戦術として考えなければなりません。

「リーグ・オブ・レジェンド」の魅力としては、いろいろあるのですが、ぼくが一番魅力を感じているのは、毎回違うゲームをしているような面白さがあるところです。

一般的なテレビゲームとして有名なRPG(ロールプレイング)ゲームでは、1つのストーリーと最終目標があって、それを目指して進んでいきます。ストーリーを進めているときやレベルを上げているときとか、あるいはいいアイテムを手に入れたときがRPGゲームの面白さですよね。でも、最後にラスボスを倒しきって、クリアしちゃったら、ゲームとしての楽しさは終了です。もう一度やっても同じことをくり返すことになります。

ところが「リーグ・オブ・レジェンド」では、レベルを上げたり、アイテムを集めたり、強い敵を倒したりという過程を毎試合、最初から最後まで楽しめるんです。面白いところを何回も何回もプレイし、体験できるというところが魅力ですね。

それを実現させている要素の1つが、チャンピオンが160種類以上いることですね。それぞれが違うスキルとまったく違う性能を持っているので、複雑さと奥深さを持っていると思います。5人対5人で戦うゲームですが、1人でもチャンピオンが違えばその試合の結果は全然違ったものにもなります。プレイヤーたちが自分で行った行動とか、選択した結果というのがダイレクトに結果に結びついてくるので、やりがいもあります。「この試合、なんか自分がいても意味ないな」みたいな感じを受けることがほとんどありません。誰もが本当にそのチームの一員として貢献できる楽しさがあると思いますね。毎回5人で冒険に出ているような感じで、毎回ワクワクします。

「リーグ・オブ・レジェンド」は5人対5人で闘うチームワークが重要な競技。©2022 Riot Games, Inc. Used With Permission

――Eviさんが担当しているトップレーナ-というのはどういうポジションですか。

Evi フィールドには、トップレーン、ミッドレーン、ボットレーンという3つのレーンがあり、それを5人で守るのですが、ミッドレーンやボットレーンは他のメンバーと協力して数的優位を作って闘っていくのに対して、トップレーンは多くの場合1人なので、ちょっと特殊な位置というか、孤立しているレーンと言われています。他のポジションから助けてもらいづらい位置にいるので、相手チームのトップと1対1で集中して戦えるレーンともいえます。もちろん、完全な1対1ではなく、味方が助けに来ることもあるし、僕が他のレーンに行くこともあるんですけれども。なので、相手のチャンピオンと1対1で闘う場合にお互いにどれくらいのダメージがあるかとか、距離感をどのくらいにすればいいかとか、相手がこういう攻撃をしてきたらこう対抗するとか、そういう知識がすごく重要なポジションになっていますね。

一般的にはトップレーンは他のレーンへの影響力が少ないと言われていますが、逆に1対1で相手を倒したりできれば、そこからゲームを大きく動かしていけるので、ミッドレーンなどの他のレーンに強力なインパクトを与えることができます。なので、ぼくはそこまでトップレーンの影響力は低くないと思っています。相手の意表を突いてトップレーンが他のレーンに移動することで、ゲームが決まることもあります。だから、意外と影響力はそこまで少なくないのかなと思います。

2021年10月に出場した世界大会でのDetonatioN FocusMe。プレイインステージ(予選)を1位で突破し、日本で初めてベスト16まで進出した。

プロ選手が魅力的な存在になること

――「リーグ・オブ・レジェンド」は、全世界で1億人以上がプレイする、世界で最も人気のあるオンラインPCゲームと言われていますが、日本では今ひとつ盛り上がっていないようにも思います。どうしたら日本での人気を上げていけるでしょうか。

Evi まず、プロ選手である僕としては、「リーグ・オブ・レジェンド」のプロシーンの代表として、僕らが日本代表として強くなり、世界大会で活躍することが大事だと思っています。ただし、何か1つをやればいいというわけではなくて、並行的にいろんなことをしていかないといけないなと。ゲームの開発会社Riot Gamesの人たち、プロリーグの運営会社の人たちと一緒に広報活動や普及活動も行っていかなくてはいけないと思います。

さらに、初心者が増えてくれないとゲームのコミュニティは成長しないし、維持もできないと思うので、初心者向けのイベントや講習会、YouTubeでのセミナーなどでアピールすることも大切です。初心者が上手にプレイできなくても、萎縮しないように易しく入れるように導入してあげるとか、そういう環境づくりも大事だと思います。

――EviさんがTwitterで積極的に発信したり、YouTubeでえびンモTVを配信しているのも、そういう活動の一環でしょうか。

Evi そうですね。プロ選手がどんな生活をしているのかを知ってもらうことも大事ですし、みんなで「リーグ・オブ・レジェンド」のコミュニティを盛り上げていきたいという思いですね。僕が自分にできることとして、日本代表として強くなるのに加えて、プロ選手が魅力的な存在になるということも大事なのかなと思います。

あの人のスマートワークが知りたい! - 第33回 eスポーツのプロEvi選手に聞いた「リーグ・オブ・レジェンド」の魅力と楽しさ

――最近はeスポーツのサークルを設置する高校も増えて、eスポーツの高校生大会も開催されるようになりました。全国規模の有名な大会として「STAGE:0(ステージゼロ)」https://stage0.jp/、「全国高校eスポーツ選手権」https://www.ajhs-esports.jp/がありますが、どちらにも「リーグ・オブ・レジェンド」が採用されています。これについて、Eviさんはどう思われますか。

Evi 高校生大会はとてもいいイベントだと思います。大会に出るのってすごく楽しいものなんですね。だから、高校生がeスポーツの大会を目標に練習して、チームで作戦や戦略を考えて、それを実際に大会で試してみることができるのはとてもいいことです。高校生が大会に出るとなれば、その友だちたちも観戦するでしょうし、そういう大会が開かれるというのは「リーグ・オブ・レジェンド」のコミュニティにとってとてもいいことだと思いますね。

Evi選手のYouTube番組「えびンモTV」https://www.youtube.com/channel/UCqWIpAZsfdtfh6qNDs1XQNAでは「リーグ・オブ・レジェンド」のやさしい解説を行ったり、視聴者の質問にも答えている。

世界大会での快挙、そこで感じたこと

――Eviさんの所属するDetonatioN FocusMeは、昨年の夏のリーグで優勝。10〜11月にアイスランドで開催された「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会「2021 リーグ・オブ・レジェンド World Championship(Worlds 2021)」に参加し、プレイインステージ(予選)をグループ1位で通過、ベスト16になるという快挙を打ち立てました。この結果を得ることができた理由を教えていただけますか。

Evi しっかり自分たちの武器を用意して挑んだことですね。それが世界の強豪チームに対しても有効だなと思えました。やれることを全部やって、これが限界っていうぐらい練習もしたし、作戦も立てた結果だと思います。今回はこれ以上やれることはなかったなと思いますが、ただ次はもっとできるなというか、次はもっとこうしたいなという思いはありましたね。

反省すべき点で言えば、トップチームに対してメタ(チャンピオンの構成)の理解度でだいぶ後れをとっていたというのがあります。試合前に相手がどういうチャンピオンを選んできそうだというのは、過去データや噂で予想がつくことがあるんですね。それは日本ではあまり選ばれないチャンピオンだったりするのですが、そういうチャンピオンを先入観なしで、練習することにトライしてみたいなと思いましたね。

――世界大会は楽しまれたのでしょうか。

Evi めちゃくちゃ楽しかったですね。練習した成果を発揮する場で、僕たちにとっては発表会みたいなものですね(笑)。世界各地の代表22チームが参加したのですが、世界大会では他国の代表も全員同じホテルに泊まっているので、いつも練習試合で対戦している相手と会ったりすると、お互い「おう、久しぶり」「君らもいるんだ」とか、「ようこそ」みたいな、そういう雰囲気とか会話はありますね。それから今回の大会では、大会期間中に僕たちのチームのAria選手(現在は韓国リーグチーム KT Rolsterに所属。詳細は後述)が誕生日だったんですね。そこでメンバーで誕生日を祝おうというときに、ヨーロッパ代表のMAD Lionsの選手も「せっかくだから僕たちもお祝いさせてよ」みたいな感じで来てくれて、一緒にお祝いしてくれたりとか、そういう交流はありました。

世界大会で勝利し、喜ぶEvi選手。DetonatioN FocusMeは、プレイインステージをグループ1位で通過した。

チームワークを醸成するゲーミングハウス

――Eviさんたちの普段の生活について教えていただきたいのですが、ゲーミングハウスに全員が住み込んでトレーニングをされているのですか。

Evi 人にもよるんですが、1年中ゲーミングハウスにいる人もいますし、休みのときには実家に帰る人もいます。だいたい仕事としてゲーミングハウスにいる期間は12月から練習が始まって、日本のプロリーグLeague of Legends Japan League(LJL)の春のリーグ戦(Spring Split)が2月から4月まで。その後、1カ月ぐらい休憩があって、次は6月から練習が始まって、夏のリーグ戦(Summer Split)が7月から9月までですね。ただ、春夏のリーグ戦で優勝して世界大会にいくと、他のチームにとっては休暇の時期が僕らにとっては世界大会に行くことになるので、そのあとも1〜2カ月はゲーミングハウスや海外のホテルにいる感じですね。

――Eviさんはお子さんもいらっしゃるし、家に帰りたいということはないんですか。

Evi 1週間に1回は家に帰っているんで、そこまでではないですね。それに奥さんがけっこう子どもの写真や動画を送ってくれるので、それを見て癒やされていますね。

――ゲーミングハウスにいて、みんなで練習をするのと、それぞれの自宅からオンラインで練習するのとはまったく違うんですか。ゲーミングハウスでは、どんな生活をされているんでしょうか。

Evi やっぱり全然違うと思いますね。「リーグ・オブ・レジェンド」は、コミュニケーションが大事なゲームなので、コミュニケーションを円滑に進めるためにもゲーミングハウスに一緒にいたほうがお互いの距離も近いし、より密接に仲良くなれるというか、その選手を知ることができるということもあります。何か話したいことがあったらすぐに、その場で相談することができます。そういう面ではオンラインとは全然比較にならないですね。

ゲーミングハウスには、選手6人のほかに、コーチやスタッフも含め総勢9人で生活しています。だいたい昼前後に起きて、午後は他のチームとオンラインで練習試合をします。これはほぼ毎日やっていますね。その後、夕食を取って、そのあとにまた練習試合や個人練習などをして、午前3時ころに就寝するような感じです。コロナ禍なので、外出もできるだけ控え、食事は宅配サービスを利用したり、コックさんに食べたいものをお願いして作ってもらい、みんなで一緒に食べます。おのおのが好きなものを食べている感じです。

勝利の喜びを仲間と共有するのはeスポーツでも同じ。ゲーミングハウスでの共同生活で仲間意識が醸成される。

昨年以上の成績を収めたい

――「リーグ・オブ・レジェンド」はオンラインゲームなので、コロナ禍でもオンラインで試合ができるし、観客もオンラインで見られるので、大会も比較的順調にできていると思います。リアルな観客がいないということについては、Eviさんはどんなふうに思っていらっしゃいますか。

Evi 観客がいないのは、やっぱりさみしいですね。eスポーツはオンラインで開催できるし、観客もオンラインで見られるのは、たしかに強みではあるのですが、オフラインで会場に観客が集まってみんなで見るのは、臨場感もあるし、みんなで大画面を見ながら一緒に盛り上がるのはすごく面白い楽しみ方だと思います。だから、オフラインの試合がないのはちょっと残念ですね。もちろん、コロナ禍なので仕方ないんですけど。eスポーツってオフラインで見るのもめちゃくちゃ面白いので、コロナ禍が終わったら、ぜひみんなにも見に来てほしいなと思いますね。選手としても励みになりますし、盛り上がりますよね。観客の皆さんがいると、選手もウォーッと思ってテンションがあがります。

――2月11日から新しいシーズンが始まりますが、今回からドラゴンの数が増えたり、ワープゲートが設置されるなど、ルールも大きく変わりました。試合数も増えるということで、質量ともに大きな変化があると思うのですが、どんな準備をされていますか。

Evi ドラゴンの数が増えて、ドラゴンの価値は高まったので、それを優先的に取りにいくというのも準備はしていますが、戦い方は大きくは変わらないと思います。ただ、試合数が増えるのは一番大きな変化かなと思いますね。LJLには、8チームが参加していて、これまでは総当たり2回だったものが、3回ずつ当たるようになります。開催日も週末だけでなく、水曜日と金曜日にも試合することになったので、スケジュール管理や体調管理もこれまでとは変わると思います。

――Eviさんの所属するDetonatioN FocusMeにとって大きいのは、中心選手の1人Aria選手が韓国リーグに移籍し、新しい選手が入ったとのことですね。

Evi Aria選手が抜けた枠には、Yaharongという韓国の選手が入りました。日本に初めて来たプレイヤーなんですけど、日本語もほんとにうまくて、僕たちは試合中の選手間の会話やコーチのフィードバックも全部、日本語でやっているのですが、そういう日本語もほぼ理解し、ニュアンスまで聞き取れるぐらいです。プレイもうまいので、もう一切心配しなくていいと思っています。新しいメンバーとの、新しい冒険が始まるっていうワクワク感しかありません。

――最後になりますが、今後の抱負についてお話しいただけますか。

Evi チームとしては、まず去年出した世界大会ベスト16という成績を超えたいと思います。現状維持ではなくて、もっといい結果を世界大会で出したいなと思っています。僕個人としては、19歳でプロの選手になって、今年で7年目になりますが、長期間やっていると慣れや惰性が出てきてしまうこともあると思うんですが、そういうことがないように、常に挑戦しつづけて、新しいことを取り入れていきたいと思っています。

「2022年は昨年以上の成績を収められるように挑戦していきたい」と語るEvi選手。

写真提供:Riot Games ©2022 Riot Games, Inc. Used With Permission

Twitter コミュニケーション YouTube eスポーツ 著者プロフィール

豊岡昭彦(とよおかあきひこ)

フリーランスのエディター&ライター。大学卒業後、文具メーカーで商品開発を担当。その後、出版社勤務を経て、フリーランスに。ITやデジタル関係の記事のほか、ビジネス系の雑誌などで企業取材、インタビュー取材などを行っている。